UNDERCOVER-ブレないデザイナー『高橋盾』
パロディアイテムをヒットさせて、定番化
こちらはアンダーカバーの定番リュックで、定価3万円ちょっとですが、ネットオークションやリユース店では中古品でも定価前後で取り引きされています。
複数の芸能人も愛用していることを公言していて、人気に拍車をかけているようです。
ちなみこれはプラダのリュックをパロディしたアイテム。
本家がハイブランドのため高額なので値段のせいもありますが、こちらもそれなりに価格の張るものでありながら、定番と言われるまでになりました。
そうした遊び心をヒットさせるセンスが、裏原ブームという一過性の流行から出てきたブランドありながら、他のブランドがバタバタと倒産していく中で生き残ってきた秘訣かもしれません。
アンダーカバーの歴史
いまやパリコレクションに出店して10年以上の常連となり、海外でも高い評価を受けるアンダーカバーですが、
その始まりはデザイナーである、高橋盾の学生時代に遡ります。
高橋盾は、文化服装学院に入学した翌年の1989年に、
友人たちとともにオリジナルブランド「アンダーカバー」を立ち上げます。
当初は、オリジナルのプリントTシャツを制作して渋谷の知人のショップに置いてもらうという、非常に小規模のブランドでした。
普通のファッションデザイナーは、デザイン学校で学んだ上、コンテストに作品を発表したりしてブランドを設立する場合や、アパレル企業にデザイナーとして就職し、その企業のブランドでキャリアを積んでいくことが多いようです。
しかし、上記の通りアンダーカバーはそうした王道を一切通っていない、非常にインディペンデントなブランドとしてスタートしました。
こうしたところは、アメリカのステューシーやシュプリームといったストリートブランドの経緯と似通っています。
モードの本場であるパリでは「異端児」と称される高橋盾、そしてアンダーカバーですが、こうしたスタートの経緯も異端児の呼び声に一役買っているのかもしれません。
アンダーカバーとパンク
高橋盾のクリエーションの源泉となっているのはパンクです。
中学生時代からパンクに親しみ、特にパンクの象徴たるセックス・ピストルズから受けた影響は、ブランド設立当初から、Tシャツに留まらずライフスタイル雑貨までリリースしている現在に至るまでアンダーカバーのデザインに色濃く反映されています。
ちなみにピストルズのジョニー・ロットン(左)に風貌が似ていたため、高橋盾(右)のニックネームは”ジョニオ”になったとか。どうですかね……。
高橋盾は、ある展覧会のステイトメントで、「自分の核になる要素は、すべて歪んでいます」と語っています。
この歪みという言葉に込められた意味にはそれぞれに解釈があるかと思いますが、パンクという音楽に内包された反骨心、反抗の態度と無関係だとは思えません。
そして、彼のクリエーションであるアンダーカバーのプロダクトには、レイヤードを多用したものや激しいクラッシュ加工を施したもの、不思議なプリントを刷ったものが多く、ベーシックなアイテムでも、ツッコまずにはいられない部分、ちょっと惹きつけられる部分を持っています。
それが彼の言う歪みの部分であるという解釈もできるのではないでしょうか。
プレ値がついちゃうアンダーカバー
アンダーカバーといえば、シーズンやアイテムよって度々プレミア価格がつくアイテムが出てくることでも有名です。
また、様々なブランドとよくコラボしており、Supreme(シュプリーム)とのコラボはシュプリーム自体の人気もあいまって非常に高価格で取り引きされます。
Supreme ×UNDERCOVER 16AW Coaches Jacket
こちらはシュプリームとのコラボによるコーチジャケット。
定価3万2000円ほどですが、モードスケープでは8万円以上もの値段で販売させていただきました。もちろん高価買取で頑張らせていただきました。
同じ柄のパーカーも7万円前後で取引されています。
HAMBURGER LAMP
MEDICOME TOY(メディコムトイ)がアンダーカバーからの受注生産により発売したインテリアライト。
写真のものは2015年に発売された復刻版ですが、オリジナルは2002年に登場しました。
オリジナルは定価4万円程ですが、当時5~6倍もの信じられないプレ値が付いたとか! 現在は入手困難で、オークショなどでも見かけません。
復刻版はサイズがひと回り小さく定価も2万円程ですが、ネットオークションでは4万円前後で取り引きされているようです。
UNDERCOVERISM 05AW ARTS&CRAFTS期 85デニム
これはプレ値はついていませんが、定価が8万9000円! とべらぼうに高額なデニムです。
もはやジーンズの原型を留めていない程のクラッシュで、見た目のインパクトは非常に大きいです。また、映画で俳優が着用したことでも話題になりました。
2005AWシーズンのリリースで、すでに10年経っていますが、今でもネットオークション等では7万円以上で取り引きされています。
ブレないクリエーションの根っこ
アンダーカバーのプロダクトは、単純な言い方をすると非常に”攻めた”デザインが多く、正直言って手が出ないという方も多いのではないでしょうか。
しかし、その手が出ない感じは、高橋盾がアンダーカバーで表現し続けている「歪み」なのかもしれません。
あるインタビューで、彼が中学生の時に好きだった俳優やミュージシャンは、どこか壊れていたり危険な部分が垣間見えるけれど、
その人達はメジャーシーンでしっかりとマスに受け入れられていて、自分もそうありたいと述べていました。
アンダーカバーのデザインはまさしくそれと一致していないでしょうか。
おかしみや不気味さを持つ服を作るブランドだから、手が出ない人がいる一方、ドハマリして抜け出せないファンを多く抱えていて、25年もの間高い評価を受け続けている。
現在のような地位を確立しながらも、ブレない感性でクリエーションを続けるアンダーカバーから、目が離せません。
この記事を書いた人
MODESCAPE
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