ココ・シャネルの疑問から誕生した「シャネルスーツ」の歴史
セレブや著名人など世界中に愛用者がおり、女性の憧れのハイブランド「CHANEL」。ハイブランドのイメージとしてはバッグや財布が思い浮かびますが、CHANELではスーツも有名です。今でこそ当たり前となっている襟のないジャケットとスリムな膝丈スカートのスーツの組み合わせは、実はココ・シャネルによって誕生したもので、「シャネルスーツ」と称されています。
今回の記事では、誕生から70年近く経つにもかかわらず、現在もなお世界中の女性から圧倒的な支持を得ているシャネルスーツについて、ココ・シャネルに触れていきながら手掛けたきっかけや誕生までの歴史に迫ります。
シャネルスーツ始まりの歴史
シャネルスーツは、CHANELの歴史の中でもキーアイテムと言えます。今では女性の一般的なスーツの形の原型となるシャネルスーツ。着心地や機能性、デザイン性を兼ね備えたシャネルスーツは、実は100年も前にデザインされたものです。
シャネルスーツについて深く知るためには、CHANELのブランドとしての歴史やココ・シャネルについても、見ていく必要があります。ここでは、CHANELの歴史と共に、シャネルスーツの始まりについてチェックしていきましょう。
出典 instyle.com
ココ・シャネルのこれまでの功績
ココ・シャネルは20世紀のファッション界を代表するアイコンの一人であり、彼女の作品は女性の自立と自由を象徴しています。彼女の影響は単なる服飾に留まらず、女性のライフスタイルや価値観にまで及んでいます。
CHANELが最も著名になったのは、彼女がファッションの素材として取り入れた革新的なアイディアに関係します。例えば、ジャージー素材は当時、作業用やアンダーウェアとしての位置付けでした。
しかし、CHANELはその素材の柔らかさと快適さに目を付け、高級なドレスの材料として採用しました。ジャージー素材の採用は、女性たちに動きやすさと心地の良さをもたらし、ファッション界における堅苦しさや格式を打破する画期的な一歩となりました。
さらに、ココ・シャネルが生み出した「リトル・ブラック・ドレス」は、多くの女性にとって必須アイテムとなりました。このシンプルでありながらも洗練されたドレスは、どんな場面でも適切であり、女性の美しさや強さを際立たせることができます。リトル・ブラック・ドレスは、時代を超えて愛され続けるCHANELの代表作といえるでしょう。
最初のシャネルスーツを発表
1923年8月5日、ココ・シャネルは、パリのサロンで新たなコレクションを披露しました。そのコレクションで発表された一つのアイテムが、後世に多大な影響を与えることとなる「シャネルスーツ」でした。
当時の女性たちは、締めつけられるコルセットや多層のスカートなど、流行のスタイルの名の下に不自由な服装を身にまとっていました。しかし、CHANELは常に一貫して、女性が快適に過ごせることを最優先の価値としてデザインに取り組んでいました。
その結果、CHANELが世に送り出したスーツは、ノーカラーのジャケットとストレートラインの膝下丈スカートという組み合わせでした。これは今日の私たちにとっては非常に一般的なスタイルと捉えられるかもしれませんが、当時としては斬新で革命的な提案でした。
CHANELは、女性たちが日常で身に着ける衣服が、彼女たちの動きを制約するものではなく、自由に動けるものであるべきだとの信念をもとに、このデザインを完成させました。
このシャネルスーツは、シンプルかつ機能的でありながらも、女性の美しさやエレガンスを際立たせることができると評価され、瞬く間に大成功を収めました。シャネルスーツは、ココ・シャネルが女性のために提案した新しいファッションの形として、その後のファッション界に多大な影響を与えることとなったのです。
固定観念を打ち砕くデザイン
ココ・シャネルは20世紀のファッション界において、多くの革命的なデザインを生み出したことで知られています。その最たる例が、彼女の取り組んだジャケットデザインや素材選びに関わる挑戦です。
CHANELがジャケットのデザインに取り組む以前、一般的な認識としては「ツイードはメンズの服の素材」とされていました。また、ジャージーも「労働者の服の素材」という位置づけであり、高級ファッションにはふさわしくないと考えられていました。
しかし、CHANELは「なぜ女性は窮屈な洋服ばかりなのか」という疑問から出発し、独自の哲学を持ってデザインに取り組みました。女性も快適でありながらエレガントな洋服を着る権利があると考えた彼女は、英国人のスーツの仕立てやツイードのような素材を女性用にも取り入れることを決意しました。
その結果、彼女は女性用のツイードジャケットを発表し、それは大きな注目を集めました。CHANELのデザインしたジャケットは、従来の女性服とは一線を画するもので、女性たちの日常の動きを制約しない快適さを持っていました。また、ジャージー素材も同様に女性用のドレスやカジュアルウェアに革命をもたらしました。
ファッション界からの引退
1939年、第二次世界大戦が始まると、その影響は各地の産業やビジネスに及び、ファッション界も例外ではありませんでした。CHANELはその前まで店舗数を増やして来たものの、大戦の影響で経済の停滞と共に、1939年にはほとんどの店舗を閉店せざるを得なくなりました。
ココ・シャネルは、この困難な時期を背景に、自らのキャリアを一度終えることを決断しました。彼女はファッションの都パリを離れ、仕事を辞めてスイスに移り住むことを選びました。
「シャネルスーツ」を正式発表
1923年にシャネルスーツの原型が発表されてからさらに改良が重ねられ、1956年に正式なシャネルスーツが発表されます。シャネルスーツは女性が快適に過ごすことができ、デザインも優れていることを目指して改良されていきました。
しかし、これはCHANELが熟考しただけでできたものではありません。シャネルスーツが現在のような形になるまでには、ライバルブランドともいえる存在が関係しています。ここでは、シャネルスーツ発表とその後のCHANELの繁栄について見ていきましょう。
出典 edition.cnn.com/style
ファッション界への復帰
ココ・シャネルは、ファッションの都パリからしばらく離れた生活を送っていましたが、1950年代になると彼女の心に再びファッション界への情熱が湧き上がることとなります。
クリスチャン・ディオールが「ニュールック」と名付けられたコレクションを発表し、時代を逆行するかのようなデザインであると同時に、戦後の欧州での新しいファッションのトレンドとして一世を風靡しました。ウェストをコルセットでしっかりと締めた曲線的なラインは、戦前の古典的なエレガンスを思わせるもので、多くの女性たちに愛されました。
しかし、ココ・シャネルはディオールの「ニュールック」が提案する窮屈なラインやコルセットの使用には激しい闘争心を燃やすこととなったのです。彼女は、自らの信念とビジョンを再びファッション界に示すべく、デザイナーとしての復帰を果たす決意を固めました。
そして、1954年、ココ・シャネルは新たなコレクションを発表し、デザイナーとしての復活を遂げることとなります。
確固たる地位を確立
ココ・シャネルのファッション業界でのキャリアは、一時的な引退を経て、更なる高みへと昇っていきました。彼女が1923年に初めて考案したスーツデザインを元に、1956年、彼女はスコットランド産の柔らかく軽いツイード素材を取り入れた斬新なデザインのスーツを発表します。このスーツは、以降「シャネルスーツ」として名を馳せることになります。
シャネルスーツの特徴は、柔らかく軽いツイード素材や伸縮性のあるジャージー素材が使われていたのが特徴です。着心地の良さや動きやすさを追求していました。また、当時の女性服には一般的だった肩パッドを排除し、代わりに機能的なポケットを追加することで、日常の使い勝手を向上させました。
さらに、スーツの縁取りにはブラックを採用し、CHANELロゴの入った印象的な飾りボタンがアクセントとして加えられていました。そして、スーツのシルエットが美しく見えるよう、繊細なチェーンがシルクのライナーに縫い込まれていました。
このシャネルスーツは、その後もCHANELの定番アイテムとして、多くの女性から支持を受け続けています。
アメリカを中心に大流行
ココ・シャネルの名前と、彼女の手掛けたファッションは、20世紀を通じて世界中の女性たちに大きな影響を与えました。特にアメリカでは、CHANELが提案するスタイルは大きな注目を浴びました。その理由としては、多くのセレブリティや公的な人物がCHANELのアイテムを愛用していたことが挙げられます。
オードリー・ヘップバーンやグレース・ケリーといった、その時代のアイコンとも言える女性たちは、CHANELのデザインに魅了され、そのスタイルを身に纏っていました。特に印象的だったのは、ジャックリーン・ケネディがケネディ大統領が暗殺された日にCHANELのスーツを着ていたことです。
CHANELのファッションは、その洗練されたデザインと機能性から、よそ行きやオフィス用としてだけではなく、パーティにも気軽に着られるという利便性を持っていました。この多用途性が、多忙なアメリカの女性たちから支持を得ていたのです。
ココ・シャネルが1971年1月13日に亡くなった際の葬儀には、彼女の功績を称えるかのように、最前列にシャネルスーツを着たモデルたちが並びました。彼女の影響力の大きさと、彼女が築き上げたファッションの世界への貢献が、この一コマからも伝わってきます。
戦後のアメリカでは、女性の社会進出が進む中、ココ・シャネルのデザインは女性の新しいライフスタイルにフィットし、大流行しました。ディオールの「ニュールック」が華やかで曲線的なデザインを提案していたのに対し、CHANELはシンプルで機能的なデザインを前面に出していました。この真逆のスタイルが、多くのアメリカ女性たちの心をつかみ、CHANELは時代の最先端を行くデザイナーとして、再び躍進していったのです。
シャネルスーツの見分け方ガイドまで
CHANELは、その高い人気と特有のデザイン性から、多数のコピー品も市場に現れました。ココ・シャネル自身、彼女のデザインが模倣されることについては、意外にも寛大な姿勢を持っていました。
その結果として、シャネルスーツには大量のコピー商品が生まれました。それはシャネルスーツのデザインが時代を超えて普遍的な魅力を持っているからでしょう。しかし、コピー品とオリジナルとの差を理解し、真の価値を知るために、本物のシャネルスーツの見分け方ガイドも作成されました。
このガイドには、シャネルスーツの特徴的な素材感や、細部の縫製技術、ブランドのロゴやタグなど、細かい点まで真偽の判断材料として記載されています。
進化し続けるシャネルスーツ
出典 vogue.com
ココ・シャネルの死去後の1971年、一時的にCHANELのブランドは輝きを失い、当時のパリのファッション界ではCHANELは過去のものと見なされていました。
しかし、1983年に大きな転機が訪れます。「モードの帝王」と称されるカール・ラガーフェルドがクリエイティブディレクターとしてブランドに参加し、CHANELの再構築に乗り出しました。ラガーフェルドは、CHANELの伝統的なエレガンスを守りつつ、時代のニーズに合わせたデザインの変革を進めました。彼の手によって、CHANELは再び先端のファッションを提案するブランドとしての地位を築き上げたのです。
そして、特に注目されるのがシャネルスーツの変革でした。ココ・シャネルが「女性が膝を出すことは下品」として否定したミニスカートが、ラガーフェルドの手によりシャネルスーツに取り入れられました。また、ジャケットもよりコンパクトで現代的なデザインにアップデートされました。その結果、シャネルスーツはより若々しく、そして現代の女性のライフスタイルに合わせたスタイルへと生まれ変わったのです。
ラガーフェルドが手がけたファーストコレクションは、CHANELが持つ古いイメージを一掃し、新しい風を取り入れることに成功しました。
モードスケープでは、CHANELのアイテムのお買取りを強化しております。
最後までお読みいただきありがとうございました。35年に渡りCHANELを牽引したカール・ラガーフェルドの後任として、2019年からヴィルジニー・ヴィアールが就任しました。ココ・シャネルのDNAを引き継ぎ、新たなデザインのアイテムを発表しています。ココ・シャネルが重視した動きやすさや着心地を重視したスタイルをベースに、若々しいエネルギッシュさをデザインに取り入れています。若返った新生CHANELに今後も注目です。
モードスケープでは、CHANELのアイテムのお買取りを強化しております。女性の憧れとも言われるCHANELのアイテムは、年代問わず人気があります。人気の高いバッグ類では、マトラッセやカンボンライン、ダイアナなどは需要が多く、高額買取できる可能性が高いアイテムです。シャネルスーツとも相性の良いブローチは、販売当時の定価の何倍にもなっているものもございます。CHANELのアイテムをお持ちの方はぜひ一度査定見積もりをご利用ください。
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CHANELの買取について
この記事を書いた人
MODESCAPE
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