ジョン・ガリアーノがChristian Diorに残した功績
前衛的なデザインセンスで世界中に熱狂的なファンを持つジョン・ガリアーノ。GIVENCHY・ Christian Dior・Maison Margielaなど名だたるブランドでデザイナーとして活躍し、多くの名作を生み出してきました。
そして現在、Z世代を中心に沸き立つ「Y2K」ファッションがトレンドになっていることもあり、2000年代に一世を風靡したChristian Diorのガリアーノ期のアイテムが再度注目を集めています。
この記事ではジョン・ガリアーノの人物像・経歴を知ると共に、ジョン・ガリアーノのChristian Dior時代の功績を振り返っていきます。
ジョン・ガリアーノとは
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ジョン・ガリアーノ、ファッション界において最も斬新で影響力のあるデザイナーの一人です。彼は、独自のブランド「John Galliano」を立ち上げ、その後クリスチャンディオールやジバンシィといった名門メゾンでの活躍を経て、ファッション業界におけるその地位を不動のものにしました。
ここではジョン・ガリアーノの生い立ちやデザイナーとしての活躍について見ていきましょう。
ジョン・ガリアーノの生い立ち
ホアン・カルロス・アントニオ・ガリアーノは、1960年にイギリスの植民地であったジブラルタルでこの世に生を受けました。6歳のとき、スペイン人の母親と共に新たな人生を求めてイギリスへ移住したガリアーノ氏は、文化的多様性の中で自分を表現する方法を探していきます。
ガリアーノ氏は世界的に著名なセントマーチンズのテキスタイル科に入学しますが、彼の関心と才能がファッションデザインにより深く傾倒していったことにより、モード科へと移籍しました。1984年には、その卓越した才能を認められ首席で卒業。学生時代には、ナショナル・シアターで衣装係として勤務し、衣装の芸術と錯視の技術を学びました。
また、ロンドンのナイトクラブシーンは、ガリアーノ氏にとって創造的なインスピレーションの源でした。彼はそこで、アーティストや個性的な人々と出会い、彼らとの交流から新たなアイデアや視点を得ていました。特にChristian Diorの帽子デザイナーであるスティーブン・ジョーンズをはじめとする友人たちは、彼のキャリアにおいて決定的な役割を果たしました。このような出会いと経験が、ガリアーノをファッションの世界での革新的な存在へと押し上げたのです。
デザイナーとしてのキャリア
ジョン・ガリアーノのデザイナーとしてのキャリアは、彼がセントマーチンズを卒業した翌年の1985年、ロンドンコレクションへの出展と同時に彼の名を冠したブランド「John Galliano」の設立から始まりました。ファッション界において革新的なアプローチを取り入れ、アヴァンギャルドなデザインで一躍注目の的となりました。
彼のデビュー作には、逆さまにして裏返して着るという斬新なアイデアを取り入れたジャケットなどが含まれており、これらは当時のミニマルファッションという流れとは一線を画すものでした。しかし、その独創的なセンスは、時代が追いついていないとも取れ、一部では「売れない服」として認識されるようになりました。彼のデザインは、時に既成概念に挑戦するものであったため、すぐには市場に受け入れられないこともありました。
しかし、ガリア―ノ氏の才能は間違いなく高く評価されていました。そのため、1996年には彼のキャリアにとって大きな転機が訪れます。ファッション業界での彼のポテンシャルを見込んだGIVENCHYは、ガリアーノ氏をデザイナーに大抜擢しました。この移籍は大きな話題を集め、ガリアーノ氏にとって新たな創作活動の場を提供しました。さらに彼のキャリアは、1997年からはChristian Diorのデザイナーとして活躍します。
しかし、2011年、ガリアーノ氏はスキャンダルにより活動を一時停止せざるを得なくなります。この出来事は彼のキャリアにとって大きな試練でしたが、彼はこれを乗り越え、2014年には新たなスタートを切ります。Maison Martin Margielaのクリエイティブディレクターに就任した彼は、再びファッション界での創造的な活動を展開し始め、現在に至るまで、変わらぬ独創性と革新性を保ち続けています。
ジョン・ガリアーノのデザインの特徴
ジョン・ガリアーノのデザインは、独創的でアヴァンギャルドなのが特徴です。中世と現代のテイストを巧みに融合させたスタイルです。これらのデザインは、今までの服飾にはない幻想的な美しさを持ち、観る者を魅了します。
ガリアーノ氏のファッションは、流行を追うのではなく、自らがトレンドを創造しています。彼のデザインや色使いはきらびやかで、ミスマッチや前衛的な要素を取り入れ、挑戦的かつ歴史主義的、近未来的な雰囲気を醸し出しています。
ガリアーノ氏は、モード界の魔術師とも呼ばれるほど、その才能と創造力で他ブランドのデザイナーやモデルから圧倒的な支持を受けています。彼のデザインは、単なる服装を超えた芸術作品として認識されており、その歴史的な作品は定期的にオークションにかけられています。これらの作品には、博物館のキュレーターやコレクター、そして他のメゾンで活動するクリエイティブ・ディレクターたちが高い関心を寄せています。
アレキサンダー・マックイーンも、生前ガリアーノ氏の作品に深い敬意を払い、彼のデザインを手に入れてはバラバラに解体し、その秘密を研究していました。ガリアーノのファッションは、単に衣服としての機能を超えた、感情や思考を刺激するアートピースとしての価値を持っています。
Christian Dior ガリアーノ期
ジョン・ガリアーノがディオールのクリエイティブ・ディレクターを務めた1996年から2011年にかけて、彼はブランドに前例のない創造性とダイナミズムを注ぎ込みました。この時代、Christian Diorは伝統的なエレガンスとアヴァンギャルドなデザインの境界を曖昧にし、今なおファッションアイコンとして称賛されるアイテムを生み出しました。
ここでは、ファッション界に大きな影響を与えたChristian Diorのガリアーノ期についてチェックしていきます。
アヴァンギャルドなChristian Diorの誕生
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ジョン・ガリアーノがChristian Diorの主任デザイナーに就任したのは1996年のことですが、その前年にはGIVENCHYの後継者としてファッション界での彼の名声は既に確立されていました。Christian Diorにおいてガリアーノが担った役割は、単にデザインを提供することではなく、ブランド全体を革新的な方向へと導くことにありました。 当時のChristian Diorは、古典的でエレガンスなデザインが特徴であり、その伝統は多くの人々に愛されていました。しかし、ガリアーノ氏はこの伝統に新たな息吹を吹き込み、Christian Diorをアヴァンギャルドなブランドへと転換することに成功しました。
ガリアーノ氏のChristian Diorにおける作品は、都市やストリートの活気とスタイルにクチュールの要素を融合させることで、ファッションを新しい芸術作品へと昇華させました。彼は、Christian Diorの歴史に敬意を払いつつも、キッチュ(低俗性)という概念に着目し、エジプトのミイラやマサイ族、アメリカ先住民、ホームレスといった多岐にわたる着想源からインスピレーションを得て、斬新なコレクションを次々に提案しました。これらのコレクションは、従来のファッション界では考えられなかったテーマやアイデアを取り入れ、観る者に新鮮な驚きを提供しました。
さらに、ガリアーノ氏が手がけるファッションショーは、単なる服の展示以上のものとして高い評価を受けました。舞台セットやメイク、音楽が一体となった彼のショーは、まるでファンタジー作品を見ているような没入感を与え、これまでにないファッションの体験を提供しました。
ガリアーノ氏がChristian Diorへ就任して以降、Christian Diorのプレタポルテ部門の売上げは爆発的に伸びました。ガリアーノ氏によるブランド刷新は、Christian Diorをただの高級ブランドから、常に時代の最前線を行くアヴァンギャルドな存在へと変貌させたのです。
差別発言による辞任
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ジョン・ガリアーノは、Christian Diorのデザイナーとしてファッション界におけるその才能と独創性で高い評価を受けていました。しかし、2011年、彼のキャリアにおいて予期せぬ転機が訪れます。ガリアーノは、あるカフェに居合わせたカップルに対して差別的な発言を行い、この行為が原因で警察に一時拘束される事態に至りました。
この事件は、彼の職業生活に大きな影を落とし、結果としてChristian Diorからの解雇につながりました。さらに、この一件はガリアーノにとって深刻な打撃となり、彼は自身のシグネチャーブランド「John Galliano」の仕事からも離脱することを余儀なくされ、デザイナー活動を休止することになりました。
このような厳しい経験を経ても、ガリアーノは再びファッション界への復帰を果たします。2014年、彼はMaison Margielaのデザイナーとして復帰しました。復帰時、ガリアーノは「少し妙に聞こえるかもしれませんが、私は一連の出来事に感謝しています」と述べ、自己反省と成長の過程を経たことを認めました。「私は、自分自身についてたくさんのことを学ぶことができました。“何かを作りたくてたまらない少年”という、長く失っていた姿を再発見できました。生き返った気分です」と彼は心境を語り、この困難を乗り越えた後の自己改革を明らかにしました。
ガリアーノ氏の影響は、Christian Diorにおいても長く続いています。現クリエイティブ・ディレクターであるマリア・グラツィア・キウリとキム・ジョーンズは、ガリアーノ氏が残した功績に敬意を表し、彼の代表的なデザインであるサドルバッグ、モノグラムデニム、ニュースペーパーパターンなどにインスピレーションを得たり、これらを復活させたりしています。このことから、ガリアーノ氏のクリエイティブな精神は今もChristian DiorのDNAの一部として息づいていることがわかります。
ガリアーノ期の代表デザイン
【サドルバッグ】
ジョン・ガリアーノがChristian Diorに在籍していた1999年に誕生したサドルバッグは、そのユニークな馬鞍形状と流れるようなラインで、2000年代初頭に世界のセレブや人気TVドラマの主人公たちに愛され、アイコンバッグの地位を確立しました。
当初はレディースアイテムとして登場したこのバッグが、ジェンダーの枠を超えてメンズファッションの世界に登場したのは、2019年、キム・ジョーンズの手によるものです。彼のアレンジで、サドルバッグは毎シーズン新たなサイズや柄を纏い、特にメンズコレクションではシックなブラックレザーのソリッドモデルが定番的にラインナップされています。このバッグは、フィレンツェのアトリエで熟練の職人によって作られ、バッグ本体に伸びる太幅のストラップが特徴で、ボディに安定してフィットする設計が魅力です。ラグジュアリーでありながら個性的なデザインは、大人の逸品としての完成度を高めています。
【ニュースペーパーパターン】
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ジョン・ガリアーノがChristian Diorでデザイナーを務めていた時代、2000年秋冬コレクションにおいて発表された「ニュースペーパー」柄は、ファッション界における象徴的なデザインとして瞬く間に認知されました。この斬新なアイデアは、衣類に新聞の記事を印刷したかのようなユニークなビジュアルを特徴としており、特にその柄をあしらったサドルバッグは、日本を含む世界中で大人気となりました。
ニュースペーパーパターンは、ガリアーノ氏の創造性とChristian Diorのブランドイメージを革新的な形で融合させた結果として生まれ、今日に至るまでファッション愛好家の間で高い評価を受け続けています。その希少性とデザインの独創性から、中古市場でも非常に珍重され、高値で取引されていることがこのデザインの価値と影響力を物語っています。
【トロッター・ライン】
ジョン・ガリアーノがChristian Diorでデザイナーを務めていた期間に発表された「トロッター・ライン」は、2001年から2002年の秋冬レザーグッズコレクションでの登場以来、Christian Diorの象徴的なラインとして多くの人々から愛され続けています。
このラインの特徴は、キャンバス地にモノグラムされた独特の「Dior」ロゴで、それが施されたバッグやウォレットは、ファッション愛好家にとっては特別な存在です。特に、各アイテムの右端に配された「1」や「2」の数字は、ジョン・ガリアーノが騎手の背番号から着想を得て採用したユニークなディテールであり、その由来は古代の戦車競走である「トロット」から来ています。カラーバリエーションは、シックなブラックやブラウンから、ガーリーな印象のピンクやブルーまで幅広く、特にピンクは若い女性から特に支持を受けました。
2006年春夏コレクションをもって生産が終了したにもかかわらず、今もなおトロッター・ラインを愛用するファンがいることから、その人気と影響力の大きさが伺えます。さらに、「トロッター・ガーリー」と呼ばれるフラワーやリボンのモチーフが加えられたアイテムもあり、この細やかなアレンジがトロッター・ラインの魅力をより一層引き立てています。
まとめ
最後までお読みいただきありがとうございます。ファッション界に大きな影響を与え続けるジョン・ガリアーノについて見てきました。ブランドの歴史に経緯を払いながら、常識を覆したジョン・ガリアーノ期のChristian Diorは愛好者が多く、リセールバリューも高いのが特徴です。現在もメゾンマルジェラのデザイナーとして第一線で活動しており、革新的なアイテムを世に送り出し続けています。今後もガリアーノ氏の活動に期待が高まります。
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Christian Diorの買取について
この記事を書いた人
MODESCAPE
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