「YUICHI TOYAMA.」が目指す究極のアイウェアとは?
眼鏡は、眼の屈折の矯正や目の保護、ファッション小物としてなど様々な役割を担い、日本ブランドでもayameやEYEVANなど多数のアイウェアブランドが存在します。そんな日本のアイウェアブランドで、2024年4月に青山の骨董通りに初の直営店をスタートするのが「YUICHI TOYAMA.」。店内では、新作モデルからブランド設立当初のラインナップまで豊富に取り揃えるストアスペースに加え、さらにはアイウェアをオーダーできる「AJITO」というオーダーメイドルームも併設される特別な空間となっています。 そんなYUICHI TOYAMA.とは、どんなアイウェアブランドなのか?どんな特徴を持ったアイウェアなのか?
この記事では、ブランドの歴史や展開ラインをはじめ、YUICHI TOYAMA.になくてはならない「Double Dutch」という構造について解説していきます。最後には、コレクションごとにモデルもご紹介しますので、是非お付き合いください。
YUICHI TOYAMA.とは?
デザイナーの外山雄一氏が福井県鯖江市の眼鏡メーカーから独立して、立ち上げられたYUICHI TOYAMA.。クラフトマンシップを持って追求されたデザインは他のアイウェアブランドとは一線を画しています。
YUICHI TOYAMA.のヒストリー
出典 mens-ex.jp.com2009年にYUICHI TOYAMA.の前身となるブランド「USH」を立ち上げ。USHとは「Under Spiritual Horn」の頭文字からなっており、「精神の内側に存在する角」という意味を持つ造語です。
「角」を内面に存在する「本質」として捉えており、その一部を象徴したいという思いが込められたブランドネーム。ハンドメイドの眼鏡はすべて鯖江市のメガネ職人の技術によって作られます。世界に誇る眼鏡の聖地として確かな製品を提供していました。
創業者であるデザイナーの外山雄一氏は、10代の頃から眼鏡に興味を持っていたと言います。そのきっかけとなったのは、フランスを代表するアイウェアブランド「alain mikli」。
中学生のとき、テレビに映る芸能人がalain mikliの眼鏡をかけて出演していたのを見て「かっこいい」と感じ、眼鏡の世界へと引き込まれました。15歳で1984年創業の老舗アイウェアストアである「jujubee」にて初めての眼鏡を購入。その後も高校受験のための塾をサボっては原宿へと足を運び、ブロウタイプの眼鏡を買っていたりしたそう。
またそれだけでなく、ファッションマガジンの表紙を飾っていたフランスのアイウェアブランド「SONIA RYKIEL」に憧れて、自身の眼鏡にカスタマイズも施していました。SONIA RYKIELを代表する眼鏡に、テンプルにリングが貫通したディテールがあります。外山氏はそれを実現すべくドライバーを使って、自分の眼鏡にも穴を開けていたと言います。完成した物にプラスアルファでデザインを施すのが好きだったようで、この頃からセンスの兆しを見せていました。
USHを立ち上げた8年後の2017年SSに、ブランド名を「YUICHI TOYAMA.」と変更して新たなスタートを切ります。
コンセプトとポリシー
出典 brutus.jpYUICHI TOYAMA.のコンセプトとして掲げられているのが「ナチュラル」。トレンドにあまり左右されないデザインをベースにしながらも、造形には美しさがあり独自の存在感があります。ただ単にミニマルな眼鏡に収まるのでなく、外山氏のデザインセンスが落とし込まれているので、老若男女問わずフィットしてくれます。
ブランドのポリシーとしては「伝統的技術」そして「革新的なデザイン」を掲げています。世界3大眼鏡産地として数えられる福井県鯖江市。まさしく日本の伝統技術が受け継がれている土地で作られるYUICHI TOYAMA.の眼鏡は、長年培われてきた信頼のできる技術がたっぷりと詰め込まれています。
腕利きの職人だからこそできる実現可能なデザインやディテールは、海外からも大きな賞賛を受けており、日本の工場で作られる「Made in Japan」の眼鏡は評価される要因の大きな1つにもなっています。
ですがこのことについて外山氏は慢心することなく、USH時代に受けたインタビューで
「デザイナーが思っている以上に海外から”Made in Japan”はとても評価されています。だからこそその冠が無くても世界に通用するようなデザインができるようになりたい。」
と答えた経緯もあり、もう1つのポリシーにある「革新的なデザイン」からは彼がブランドの前身時代に抱いた日本ブランドならではの評価と、デザイナーとしてのプライドのようなパッションを感じることができます。ブランドのコンセプト・ポリシーもさることながら、2024年4月に東京、骨董通りにオープンした初の旗艦店の店舗コンセプトも話題を呼んでいます。「工芸品としての眼鏡」をコンセプトにしている店舗では新作からアーカイブアイテムまで取り揃えられています。
店内のテーマは「緊張と寛ぎ」。店舗コンセプトにマッチしたオブジェクトがあちこちで見られ、非常にラグジュアリーな雰囲気に。LOEWE Foundation Craft Prizeで2019年に受賞した橋本和成氏の作品や、特注した伊達冠石のテーブル等があり、まるでアートミュージアムのような空間になっています。
また実際に外山氏からカウンセリングを受けることができるオーダーメイドルーム「AJITO」も完備。よりブランドの世界観を体感することができます。
かけやすさとデザインの追求
デザインの根幹には「見る・考える・描く・作る・壊す」といった5つのステップがあり、そのため外山氏が手がける眼鏡はどれも独創的なものへと仕上がっています。自身のデザインには「alain mikli」や「Ray-Ban」といったアイウェアブランドや「GIORGIO ARMANI」「Jean Paul GAULTIER」などのデザイナーズブランドの眼鏡からもインスパイアを受けているそう。
またデザインを考える上で大切にしていることは、日常で意図的に美しい環境や物と接するようにしているという点。映画や音楽・アートなど自分の生活で関わるカルチャーからデザインのインスピレーションを受けているため、常にアンテナを張っていると言います。
そういったプロセスを経て生み出されるYUICHI TOYAMA.の眼鏡には、従来の普遍的なものにならないようにちょっとしたアレンジが加えられています。例えばフレームの上部分に角をデザインしたのであれば、下部分には丸みを付けてアシンメトリーなディテールを施す。そうすることで少しデザイン性を持った眼鏡になりファッショナブルな印象を与えてくれます。
技術的な面だと、ブラウン管のテレビに似た「テレビジョンカット」のフレームをどう美しく見せるか試行錯誤をしたり、0.5〜0.7mmといったレベルの調節でカッティングしたり、その結果独自の方法を編み出すこともあります。
また製法に関しても伝統的な技術のみにこだわるのでなく、3Dマシンのような最新鋭の技術を使ってパーツを作ることもあり、眼鏡のデザインに関して柔軟な姿勢を見せています。
ですが決してデザイン優先でものづくりをすることはなく、かけ心地や着用感を重要と捉えているため、理にかなった眼鏡を作るために年間500枚以上ものスケッチを描くことも。そうしたクラフトマンシップを続けていたことで、YUICHI TOYAMA.のアイコンアイテムでもある「Double Dutch」が誕生します。
「Double Dutch」構造
2016年に発表されたYUICHI TOYAMA.を代表する眼鏡「Double Dutch」。「一筆書き」にも「レンズを2本のフレームで挟み込んだ」ようにも見えるユニークな眼鏡は人気を博しています。
ある日、外山氏が公園を散歩中にたまたまダブルダッチ(オランダ人によって広められた、2本のロープを使って行うスポーツ)の練習をしていた若者たちを見かけます。2本のロープが織りなす軌道と規則性のある残像は彼にインスピーションを与え、その場でスケッチ。そしてテンプルとフロントを境に2本の線でフレームを作るというアイデアが誕生しますこのアイデアを元にデザインを考えていく中、ダブルダッチと同じくオランダが共通する「ダッチデザイン」のエッセンスを加えることを試みます。
ダッチデザインとは個性やアーティスト性を重要視したオランダの芸術的デザイン流派のことで、1990年代にヨーロッパから世界中へと広がります。カラフルなカラーリング、対称的(時には非対称)なグリッドが特徴のデザインの一種で、日本で言うところの「風神雷神図屏風」のような「琳派」に近いニュアンスがあります。
そして引き続き商品化を進めていく中、このデザインが「一筆書きで描いたようなフレームに見える」ことを発見し、フロント部分のラインをより強調させることに決めます。偶然にもオランダから持ち込まれた「七宝」でカラーリングすることで、より一筆書きの部分が目立ち、ユニークで個性のある眼鏡が完成しました。
Double Dutchは優れたデザインだけでなくフィッティングの理にかなった造形、そしてチタン素材を使うことで軽量かつ金属アレルギーになりにくいというポイントも持ち合わせています。
3つのライン
YUICHI TOYAMA.には3つのラインが存在。ブランドのポリシーはしっかりと踏襲しながら外山氏のディレクションを筆頭に、各ラインごとに役割を持った眼鏡を展開しています。
YUICHI TOYAMA.(ユウイチトヤマ)
ブランドの根幹をなすメインコレクション。前述したニュートラルをベースにデザインされたメガネが特徴です。顔に馴染みながら個性のエッセンスを少しだけプラスしてくれる、そのような繊細なデザインが多くのファンを獲得しています。
また、さまざまなブランドとのコラボレーションをしているのもポイント。外山氏も影響を受けたというGIORGIO ARMANIとのカプセルコレクションも話題となりました。2023年12月に発表したそのコレクションにはアイコンであるDouble Dutchもラインナップされており、いつもとは一味違った表情を見せてくれています。
YUICHI TOYAMA/D(ユウイチトヤマ/ディー)
コンセプトはジャパニーズモダン。メインライン同様にシンプルでミニマルなスタイルを追求しながらも、クラシカルな佇まいを提案しています。スタンダードな眼鏡が多くラインナップされていて、かける人を選ばないオールマイティなコレクションです。
ちなみに名前にある「D」とはUSHからYUICHI TOYAMA.へとブランドを改変する際、パソコン上にあった大量のアイデアやデザイン、ドローイングのファイルがDと名付けられたフォルダに格納されていたことが由来。それが現在のデザインチームによって新たな息吹が与えられ、今のトレンドに合わせながら再構築されているのがYUICHI TOYAMA/Dなのです。
YUICHI TOYAMA:5(ユウイチトヤマ:ファイブ)
ブランド内で1番新しいラインとなるのが2021年に発足したプレステージライン。高水準と呼ぶに相応しいこのラインは、鯖江市の5名の腕利き職人(試作、パーツ、金型、塗装、仕上げ)と協業して制作されています。
眼鏡の構成はオリジナルパーツでされており、蝶番部分にはヘキサゴンネジを採用。これはYUICHI TOYAMA:5のシグネイチャーネジであり、購入すると付属するカード型の専用ネジ回しでメンテナンスすることが可能です。
アジア人の骨格に合ったデザインで作っているため、顔のシェイプにマッチしたかけやすい眼鏡なのがポイント。また大量生産ができないため完売や予約待ちが多く、まさに外山氏のこだわりが詰まった究極の眼鏡と言えます。
コレクションと代表モデル
YUICHI TOYAMA.で展開しているコレクションをご紹介。どのコレクションも個性的かつ、幅広い層にもフィットしてくれる魅力があります。
Benjamin コレクション
1750年代、ベンジャミン・マーティンが開発したビジョングラス(視力矯正メガネ)をモチーフに、YUICHI TOYAMA.なりにブラッシュアップした代表的なコレクション。Double Dutchをベースとしていて、分厚めのリムにタイヤのようなアセテート素材を挟ませています。また先セル部分が輪っかになっているのがBenjaminコレクションの特徴。
ヘキサゴンシェイプの「U-142」は眼鏡にこなれ感を持たせたい人に最適。 角張ったフレームがブリッジ部分と相まっておしゃれな印象に。
「U-158」はウェリントンシェイプでクラシカルなイメージで汎用性の高さがあります。太めのインナーリムのおかげで、セルフレームっぽい表情も併せ持ったユニークな眼鏡です。
Define コレクション
「境界線」を意味するDefineコレクション。その文字通り、アセテートフレームの内側に縁取りされたメタル素材のインナーリムがこのコレクションの特徴です。フレームはフォックスシェイプの印象を残しながら、かける人を選ばないウェリントンシェイプ。肉厚なフレームはソフトな雰囲気を与えてくれます。
YUICHI TOYAMA.を語るに欠かせないのが「U-128 IND」。INDとはアメリカ・インディアナポリス空港を指していて、フレーム名に雄一空港コードが記されたシリーズになります。代表的な眼鏡で、ブランドのメインルックにも登場するほど。
もう1つおすすめなのが「U-122」。クラウンパントのシェイプで、フレームの上部がフラットになった独特な形をしています。ボストンライクなイメージがありますが、クラウンパントの方がよりシャープで洗練された印象を持っており男女問わず人気なモデルです。
Finch コレクション
Finchとはテンプルがなく、鼻に挟んでかける鼻眼鏡のこと。19世紀から20世紀にかけて欧米で大流行しました。この眼鏡をモチーフにしてデザインされたのがFinchコレクション。Double Dutchの構造を取り入れながら、ソリッドなフレームやクラシックなフレームが展開されています。
チタンとアセテートの素材でデザインされた「U-132」。クラウンパントなシルエットで知的な印象があります。顔をクリーンに見せながらもおしゃれさがあるのが魅力。
オクタゴン(八角形)のフレームが小気味良い「U-135」。先ほどのクラウンパントとはまた違ったムードがあります。フレームは多角形な一方、レンズシェイプはラウンドなのでそのギャップがユニークさを演出してくれています。こちらもFinchコレクションでおすすめな眼鏡。
まとめ
最後までお読みいただきありがとうございます。2017年のスタート時ではコアなファンに支持されていましたが、今では国内にとどまらず海外でも高い評価を得ています。その理由は、日本の伝統的な職人技術と合わせ、かけやすさに妥協してデザインが先行していないか精査しこだわり抜く姿勢からも納得ですね。トップブランドに上り詰めたYUICHI TOYAMA.のアイウェアをお店で見かけましたら、是非そのかけ心地を体感してみてください。
また、モードスケープではYUICHI TOYAMA.の買取を強化しています。アイテムの価値を適正に反映し、最高額を見出す査定をいたします。YUICHI TOYAMA.のアイテムを売りに出すか迷っている場合にも、是非モードスケープにご相談下さい。とりあえず値段だけ聞いて検討したいという場合は、LINE査定などで査定額を見積もることも可能です。お気軽にご相談ください。
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MODESCAPEでは、YUICHI TOYAMA.の買取を強化しています。高い人気を誇るDouble Dutchコレクションの「Marcel」や「Daniel」など、査定金額アイテム一つ一つの価値を理解し適正な査定をいたします。お買い取りをご検討の際は、お気軽にご相談ください。
YUICHI TOYAMA.の買取についてこの記事を書いた人
小川剛司 (MODESCAPE 編集部)
ライター・ファッションモデル。学生時代のアルバイトからファッションの世界へ。大手セレクトショップの販売員、ECスタッフを経て、長年携わったアパレルの経験と知識を活かしWEBライターに。数々のファッションマガジンサイトで執筆を行い、メンズ・レディース問わずおしゃれを発信しています。現在は韓国を拠点にモデル活動しており、更なるファッション知識を探求中! Instagram:@t_t_k_k_s_s
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