山本耀司が認める才能をもつ女性デザイナー
ヨウジヤマモト社には山本耀司氏がデザインを手掛けていないブランドラインも多く存在します。
そのうちの一つが『RAGNE KIKAS for Yohji Yamamoto』。
ニットウェア、カットソーを専門とするブランドラインで、手掛けているのはエストニア出身の女性デザイナー《ラグネ・キカス》。彼女は山本耀司がその才能を認め、本人からオファーを受けて入社した経緯のある人物です。今回はそのラグネ・キカスについて生い立ちや入社までの経緯などご紹介したいと思います。
彼女の母国であるエストニアという国は、編み物や縫い物、かぎ針編みなどといった伝統的なハンドクラフトが生活や教育の一部として残る国。ラグネ・キカス自身も幼少の頃から刺繍やソーイングなどのハンドクラフトを祖母から習っていたそうです。また、エストニアでは中学校の必修科目としてもハンドクラフトの授業があり、ラグネ・キカスは知識、技術ともに力をつけていきます。
高校卒業後、一度はファッションへの道を断念したもののドイツのハンブルグ応用科学大学に進学し、ファッションデザインを専攻。今までよりもさらに本格的に編み物に打ち込む日々を過ごします。学校ではニット以外にもパターンやデザイン画など、ファッションデザインに関わる全てのことを習いましたが、ラグネ・キカスが卒業制作に選んだのはやはりニットでした。
《卒業制作 「Dress Code Defensive」》
イエール国際モード&写真フェスティバル2012に出品され、結果は実質2位と3位に相当するプルミエール・ビジョン賞と市民賞の二つの賞を受賞。当時その審査委員長を務めていたのが山本耀司でした。
山本耀司氏がラグネ・キカスの作品スペースで直接、「とても力強い作品だ。どんどんクリエーションを続けてくださいね。より商業的な物作りも考えてみた方がいい。」と言い、加えて「もう仕事の心配はしなくていいね。」と伝えたそうです。「もう仕事の心配はしなくていいね。」という言葉の意味がわからなかったラグネ・キカスですが、後に山本耀司からのオファーだったのだと気づき、すぐに日本へ来ることを決め2012年11月にヨウジヤマモトに入社。
2013-14年秋冬コレクションからランウェイコレクションの一部のニットウェアアイテムを手掛けることになります。
《Yohji Yamamto FEMME 2013-14年秋冬コレクション》
《Yohji Yamamto FEMME 2014春夏コレクション》
《Yohji Yamamto FEMME 2014-15年秋冬コレクション》
この当時ラグネ・キカスが手掛けていたと言うことは公表されていませんでしたが、女性デザイナーならではフェミニンなニットウェアは山本耀司のクリエーションとは良い意味で異なり、新鮮さがありました。入社から3年後の2015年にはラグネ・キカスが手掛けるニットウェアライン《plyy by RAGNE KIKAS / プライ バイ ラグネキカス》が始動。メンズ、レディース共に展開され、Yohji Yamamotoの世界観にも匹敵するニットウェアを展開しました。
ブランド開始から数シーズンは少量の展開でしたが徐々にその数が増え、1年後にはクリエーションに特化したデザイン性の高いニットとカットソーを提案する別ラインとして《RAGNE KIKAS for Yohji Yamamoto / ラグネキカス フォー ヨウジヤマモト》がスタート。
スタートしてすぐにはあまり反応が見られなかったもののRAGNE KIKASの名は徐々に浸透し、ヨウジ2019-2020AWには7シーズン目を迎えます。ニットという限られたテーマの中で自由な発想をもとに独創的なニットウェアを提案するRAGNE KIKAS for Yohji Yamamoto に今後も注目です。
今回はこれで以上になります。
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