アイウェアの常識を覆した。美しさを追求した眼鏡「10EYEVAN」について。
2017年、EYEVAN 7285のデザイナーである中川浩孝氏が設立したアイウェアブランド「10EYEVAN」。 メガネを複数のパーツの集合体とし、特別な10個パーツで構成した眼鏡を展開しています。
機能美・造形美を見事に兼ね備え、まさに芸術と呼ぶにふさわしいほどの眼鏡に仕上がっています。
私、実は前職にて4年ほど眼鏡屋で勤務しており、フィッティング、フレームの修理、レンズ加工etc…など様々な業務を経験しておりました。
今回10EYEVANの記事を作成するにあたって各パーツを調べたところ、魅力あるパーツばかりで思わず垂涎モノのラインナップでございました…。この記事では10EYEVANの魅力を眼鏡屋で働いていた経験もある筆者が紹介・解説していきます!
「10EYEVAN」の概要
1972年、医療用器具として使用されていたメガネを「着るメガネ」として売り出した「EYEVAN」。これは日本における初のアイウェアブランドとなり、のちに「OLIVER PEOPLES」とライセンス契約する等、国内のみならず海外でも飛躍を続けました。
そんな偉大なる歴史を持つアイウェアブランドから2017年に発表された新たなライン「10EYEVAN」。同ブランドの「EYEVAN 7285」「E5 EYEVAN」のデザイナーを務める「中川浩孝」氏によって立ち上げられました。オリジナルのEYEVANやその他のラインとは設立に至った経緯やコンセプト、そして価格帯に違いがありしっかりと差別化が図られています。
そんな気になる各ラインとの違いは別記事にて「EYEVANのブランドラインの違いを徹底解説!各ラインはどう違うのか?EYEVAN7285、10EYEVAN、Eyevol、E5eyevan・・・」徹底解説しています。
中川氏は機械工具メーカーでキャリアをスタートさせたのち、メガネ業界へ転身。アイウェアのセレクトショップで経験を積む傍ら、デザインの独学に励みます。その後は自身のブランドを立ち上げ、そこで3年間ブランドの運営や経営を学び、2009年にEYEVANへデザイナーとして入社。それからはEYEVAN7285のメインコレクションを担当していました。
「10EYEVAN」立ち上げの経緯は、彼がメガネのデザインを長年していく中で頭に浮かんだ、いくつかの構想やアイデアがきっかけとなります。 それを実際に商品化するべく「美しい道具」というテーマを掲げ「美しい道具は美しいパーツの集合体」の元、ブランドネームにある通り「10個の特別なパーツ」からなるアイウェアを誕生させたのです。
メガネ産業の聖地と呼ぶに相応しい、福井県鯖江市の職人にアイデアやアドバイスを受けたり、パーツにこだわりを持つ彼はメーカーや工房の職人に何度も掛け合っては話し合い、立ち上げに要した歳月は3年にもなると言います。それほど拘り抜いて作られたメガネは快適そのもの。
一見するとシンプルでミニマルな見た目ですが鼻パッドには当たり心地の良い「真珠貝」が使われていたり、テンプル部分には開閉がスムーズになるように「トルクスネジ」というパーツが採用されています。
またセルフレームのメガネに関しては、素材となるプラスチックにデッドストックの「セルロイド」生地を使うという徹底っぷり。セルロイドとは歴史上最古のプラスチックで1856年に開発されました。セルロイドをフレームに使ったメガネの特徴として、肌触りの良さが挙げられます。衣類で例えるならシルクのようで、かけ心地も良く、長時間肌に触れていてもストレスはありません。
もう1つ特徴として美しい艶感があります。一般的にセルフレームに使用される生地「アセテート」と比較してみると、滑らかな艶が浮かび出ていてラグジュアリーさを纏っています。
10EYEVANが掲げる今後の目標として「作ってそこで終わりではなく、1つ1つのモデルを大事にしていきたい」とインタビューで語る中川氏。
老舗シューズブランドに「ラスト」と呼ばれる靴を作るための原型があるように、10EYEVANのメガネも原型を軸に素材やデザイン違いのものをリリースしていきたい。そしてやりたいことの幅を広げていきたいとも発言しています。
10個の特別なパーツ
ドラマの小道具や芸能人が着用することで度々話題を集める10EYEVANのアイウェア。制作するにあたって金型からオリジナルを作っていたり、中にはそのパーツを製造する機械すらオリジナルというものもあります。中川浩孝氏が拘り続けている10個の特別なパーツを解説していきます。
・β-Titanium Torx Screw
出典 oomiya-eyewear.jp
10EYEVANに使われるのは「βチタン」と呼ばれる90%以上がチタンで構成されているトルクスネジ。軽い上に強度があり、日常的に使うメガネには要とも言えるパーツです。
普通のネジとの違いとして挙げられるのは「締めやすく、緩みにくい」という点。星形の窪みがあるネジ穴は力学的な計算に基づき、少しの力を加えるだけでしっかりと締まります。うっかりネジ頭を潰してしまうリスクがなく、万が一完全に潰してしまった場合は修理業者に依頼する必要があるので、とても有用なネジ穴と言えます。「OSロック」という構造が採用されているおかげで簡単には緩まなく、メンテナンスがとても楽に。
過去にトルクスネジのようなディテールを持ったネジが作られなかったのは、作るのが難しくコストもかかるため。
ですが10EYEVANではその細かなポイントを拘ることで、買い手側が快適に使うことのできる満足のいくメガネの提供に成功しました。
・Closing Block Hinji For Torx Screw
出典 oomiya-eyewear.jp
10EYEVANでは前述したβ-Titanium Torx Screwの開発に伴い、智(よろい)部分もそれに合った特別なものを採用しています。
智とはメガネのフロントと丁番を繋ぐパーツを指します。テンプルを開閉するにあたって、1日に何度も負荷のかかる部分なので非常に重要なパーツと言えます。短いトルクスネジを使うことができたため、それに合わせて10EYEVANに使われる智は厚みの少ないものを作ることができました。
結果、この構造はフレームのデザインの幅を広げることに作用します。通常、智に合わせてフロントにある左右のリムを繋いでいる「ブリッジ」の厚みが作られますが、スリムな智が実現したため全体的なフォルムは、とてもシャープでミニマルに。 さらに智はリムとテンプルを繋いでいるので、フロント・サイドから見えるパーツです。そのためただの継ぎ目とならないように各パーツとの親和性を高めるデザイン性を持って設計されました。
この拘りがあることで全体的に統一、そして洗練された造形になったのです。
・10 eyevan Titanium RIM
出典 oomiya-eyewear.jp
軽量で高強度な特性を持つチタンをベースに10EYEVAN用に製造したリムです。リムとはレンズを囲んで支えている部分のことで、メガネにおける顔とも言えます。10EYEVANではこのリムを製造する機械からオリジナルで作られており、唯一無二なパーツになっています。
レンズを固定する「リム線」と呼ばれる溝を約40年にも渡り研究・開発している丸山裕恭氏とタッグを組み、リムの制作にあたりました。
計算された細やかな造形は素材の良さがいかされていて、とてもラグジュアリーな雰囲気を醸し出しています。仕上げを丁寧に行うことで、均一にメッキが乗り、結果見栄えの良いテクスチャーを実現。
一般的に使用されるニッケル合金よりも耐久性に優れているため、長く愛用することができます。
・CR39 2 Base Curve Lens
本来、製品が店頭に置かれる際はアクリルで作られたダミーレンズを搭載したメガネを並べますが、10EYEVANでは「CR39」と呼ばれるレンズをセットしています。
アメリカのPPG社が開発したレンズで、その名前の由来は「39回目の実験で成功したから」とされています。
特徴としては光を分散しにくくさせるため、プラスチック素材によく見られる「ひずみ・揺れ」といったものを無くした上質なレンズと言えます。UVカットやARコートという反射を防止してくれるコーティングが施されているのも嬉しいポイント。
また特注で作成されたCR39レンズは独特なカーブを帯びていて、フレームのデザインやバランスにも重宝されるディテールを兼ね備えています。
・Shell Shaped Hinge
こちらは鼻パッドを繋ぐジョイントの役割をするヒンジ。このパーツを商品化するにあたって、構想から2年以上もの時を費やした10EYEVANオリジナルのヒンジです。交換や取り付けは簡単なのに、鼻パッドは緩み難く外れ難いというのが特徴。
シェル型ヒンジと名付けられていて、文字通り貝を開く様に鼻パッドを取り付ける仕様からその名称になりました。
ヒンジの中央部分に板を差し込んで固定するこの構造はメガネにおいて世界初の仕組みになっていて、2016年に特許を取得しています。
専用の工具も同時に作られていて、10EYEVANを購入したメガネ屋でのメンテナンスはもちろん、自身でもケアができるように販売用も用意されています。
・Shell Pad
中川氏もお気に入りだという真珠貝を使った鼻パッド。非常にかけ心地がよく、鼻に優しくフィットしてくれるため従来の鼻パッドとは一線を画しています。貝を用いた装飾品では貝ボタンや高級時計の文字盤にあしらわれるのが有名です。全てが同じ模様の貝殻は存在しないため、1つ1つの柄が唯一無二。そしてラグジュアリーな輝き方は光の当たり具合によって様々な表情を見せてくれます。
伝統的な手法で作られる10EYEVANの鼻パッドは、日本で貝ボタン製造のトップシェアを誇る奈良県川西町の職人たちによって作られています。 一般的には樹脂製の鼻パッドが主流ですが、だからこそ天然素材ならではの上質で肌触りのいいものに注目が集まっています。
私個人の感想としても貝パッドは本当におすすめです!中川氏もインタビューで述べていましたが、とにかく鼻へのあたりが樹脂や金属のものと比べると段違いにフィット感があります。普段メガネをかけない人でもその違いをはっきりと体感できるでしょう。また鼻パッドの跡が付きにくいというのも嬉しいポイントです!
あえてデメリットを挙げるとするならば、貝殻はカルシウムで出来ているため、経年変化ですり減ってしまうこと。 ですが前述した専用の工具を使って、自身で取り替えることが可能となっています。
・Crossed Bridge
トルクスネジのおかげで智をシャープに作ることが可能になったため、それに合わせてブリッジもスタイリッシュなものに。ですが細いブリッジのままだと耐久性に欠けるため前後に2本取り付け、そしてロウ付けを4箇所にすることで安定性と強度を保つことができました。
正面から見ると1本のブリッジに見えますが、角度を付けてみると2本になっているのがデザインとして美しく、シンプルながらも洗練されたムードが特徴。まさにおしゃれと機能性が共存していると言えます。またチタン製のマットな質感は高級感も演出してくれています。このブリッジは元となる金型から開発されていて、10EYEVANのために生まれたオリジナルパーツです。
・β-Titanium Wire Temple
1番細い部分では厚さ0.09mmにもなるワイヤーのようなテンプル。耐久性と軽量さを持つβチタンだからこそ、この細さでも十分な安定感があります。また長時間メガネをかけていても疲れにくいのがポイントです。テンプルはフレームと同じくらいデザインを左右する大事なパーツ。鋭い直線と緩やかな丸みが合わさったフォルムはミニマルかつスマートな印象に。これもその他のパーツ同様に、0からデザインされたオリジナル部品です。
この細さはデザイン面だけでなく、調整面でもとても重宝します。顔に対して負荷なく沿う当たり心地や、耳へのかかりを調整する際に加工しやすいため細かな微調整が可能。
10EYEVANの掲げる「美しい道具」は素材そのものを指すのはもちろん、メガネをかけた時の美しさも含まれているのです。
・18K Gold Balancer End tip,Silver925 Balancer End tip
メガネ全体の重量バランスを調整するために搭載されているエンドチップ。メガネの前側はレンズがあるためどうしても重くなってしまいます。そうなると鼻パッドに対してかかる負荷が大きくなるため、痛みやストレス・鼻パッド跡が残る原因にもなります。
そこで活躍するのがテンプルの先のパーツ、エンドチップです。メガネの後ろ側に重しを設けることでバランスを持たせ、1:1の黄金比になるように調整します。
これが非常に大事で、メガネをかけた時に思う「軽い」という感覚は全体の比重が1:1になっているどうかが決め手となります。10 EYEVANでは「18金」と「シルバー925」の2つを用意。テンプルでさりげなく輝く装飾は主張しすぎないエレガンスさを醸し出します。
まとめ
最後までお読みいただきありがとうございました。
拘りを持つ10個のパーツによって作り上げられる10EYEVANのメガネ。機能面・デザイン面ともに優れていて、構想からブランド立ち上げまで長い時間を要したことに納得がいきます。
テーマである「美しい道具」を具現化したメガネは実際に調べてみると意外な発見が多く、中川浩孝氏のメガネに対する「本気」を感じさせられることばかりでした。メガネは日常的に使うものだからこそ、丈夫で長く愛用できるものがいいですよね!
10EYEVANがリリースする今後のラインナップが楽しみです。
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10 eyevanの買取について
この記事を書いた人
小川剛司 (MODESCAPE 編集部)
ライター・ファッションモデル。学生時代のアルバイトからファッションの世界へ。大手セレクトショップの販売員、ECスタッフを経て、長年携わったアパレルの経験と知識を活かしWEBライターに。数々のファッションマガジンサイトで執筆を行い、メンズ・レディース問わずおしゃれを発信しています。現在は韓国を拠点にモデル活動しており、更なるファッション知識を探求中! Instagram:@t_t_k_k_s_s