アメリカが生んだ革靴界のTOPに君臨する「ALDEN」を徹底解説します!
誰しも1度は履きたいと憧れる「ALDEN」の革靴。革靴といえばイギリスやイタリアの印象が強いですが、ALDENはアメリカで生まれ革靴界の王者として君臨し長く愛されています。そんなALDENには様々なモデルが展開されていますが、どんな特徴があるのか気になりますよね?
この記事では、ALDENを代表するコードバンをはじめとする素材や、ALDENを語るうえで欠かせないラスト(木型)の種類や特徴について詳しく解説していきます。最後にはおすすめモデルも紹介しますので、是非ご覧ください。
ALDENとは
老舗紳士靴メーカーとして名を馳せるALDEN。ブランドを代表するコードバンの革靴は名品であり、現在でも憧れのアイテムとして人気を博しています。
歴史
出典 aldenshop.com
1884年、アメリカ・マサチューセッツ州ミドルボロウにカスタムメイドされたブーツや受注生産を行う紳士靴メーカーとして設立。創業者である「チャールズ・H・オールデン」から取り「ALDEN SHOE COMPANY」と名付けられました。
事業は順調に拡大していき、生産ラインの拡張にともない1892年に同じくマサチューセッツ州のノースアビンドンへ工場を移します。チャールズ氏は1931年にALDENを引退。所有権はビジネスパートナーであったターロウ家によって今もなお受け継がれています。時期を同じくして工場はブロックトンへ移されましたが、現在では元々の場所であったミドルボロウに、近代的な設備と共に再建されました。
4代に渡る同族経営の会社であり、高級紳士靴として地位を確立しています。コードバンを使ったクラシカルな革靴というイメージのみが先行しますが、実は矯正用シューズにも長けており、その分野を開拓しています。
足に問題を抱えた人でも快適な履き心地や歩行を実現すべく、製品の開発・調査を実施。実際に医療用シューズを制作していた会社を買収、そこで使われていた木型を改良し「モディファイドラスト」と呼ばれる、履き心地の良さを追求したALDENオリジナルのパーツを開発しました。
サイズとウィズ
サイズは靴内部に記載されています。アメリカのブランドであるため、USサイズ表記(インチ)になっているので注意が必要です。
例:9(USサイズ)=27cm(日本サイズ)
またサイズに加えてウィズの表記もあり、これは足囲(幅)を表しています。A,B,C,D,E,EE…とアルファベット順に幅が大きくなります。本国アメリカではAA〜EEEEまで取り揃えており、様々な足の形や大きさにフィットするようにウィズを展開しているのが分かります。
日本ではDの取り扱いが主流。ですがALDENのウィズは他メーカーと比べるとやや広めなので、実際のところD(ALDEN)はE〜EE(他メーカー)に相当します。また、後述する木型によってサイズやフィット感が大きく変わってくるので、そこにも注意が必要です。
アイアンシャンク
通常、革靴にはシャンクというパーツがアウトソールとインソールの間に埋め込まれています。普段目にすることはありませんが歩行や履き心地に関して重要な役割をしており、靴の芯とも呼ばれています。
シャンクとは土踏まずを支えるパーツで、歩行時の安定性の向上や靴底の変形を防止。シャンクが折れたり足に効いてない場合、靴の形状が歪んでしまったり足自体に悪影響を及ぼします。
昨今では硬くてしなやかな竹や革、樹脂を採用するメーカーも多いですが、ALDENでは他の素材と比べると耐久力が段違いである、鉄を使用しています。シャンクは革靴を長く愛用するために無くてはならないパーツなのです。
ウォーターロックソール
その名の通り、水を防ぐソールとなります。現在ではレインブーツなどに見られるゴムソールが防水ソールとして主流ですが、ウォーターロックソールはそれらが開発される前の製法なのです。
靴底に使用される革にオイルをたっぷりと染み込ませることで水の侵入を防ぎます。通気性はやや失われますが通常のレザーソールよりも滑りにくく、また摩耗にも強くなっています。ALDENらしいクラシカルな雰囲気はソールにさえ、存分に溢れています。
ALDENの革の種類
コードバン
「革のダイヤモンド」とも呼ばれる、きめ細かな美しい艶が特徴の革。馬の臀部の革で、1頭から取れる量はごく僅かなため希少な素材として重宝されています。
ALDENではホーウィン社のシェルコードバンを使用しており、長く愛用するほど馴染みが良く、履きジワもしっかりと残ります。革製品であるため水には弱く、雨などで濡れたまま放置してしまうと、水染みができてしまうことも。
カーフ
仔牛を加工したレザーで、成牛とは違い傷が少なくしなやかな質感を持っています。コードバン同様にカーフレザーはALDENの中でも人気の高い素材です。
きめ細かで柔らかな素材のため足馴染みが良く、履き続けることで次第にフィット感が増していきます。
スウェード
主に仔牛や仔山羊の使った起毛皮革。なめした裏皮を細かく毛羽立たせることで独特な風合いを見せます。他の革製品とは違って保湿クリームが不要なので、日常におけるケアの手軽さもポイントです。
ALDENでは世界中の革から厳選したスウェード素材を使用。発色の良さをいかし、常に10色ほどカラーバリエーションを展開しています。
クロムエクセル
コードバンと同じく、ホーウィン社のクロムエクセルを使用。このレザーの特徴は分厚い牛革にオイルをたっぷりと染み込ませた、オイルドレザーという点です。経年変化で見られる革のへたりや小キズ、シワは味となって独特な雰囲気を見せてくれます。
また水弾きが良く、天候を気にせず履けるのもポイント。クロムエクセルはドレスシューズというより、主にワークブーツ等のラギッドなアイテムに採用されています。
ユティカ
ホーウィン社が手がけるオイルドレザーで、ALDENでは2015年から2018年の間のみ使用されていました。そのため今では廃盤となっており、とても希少な革と言えます。
クロムエクセルよりもオイルド感は増しており、モチモチっとした質感。柔らかで温かみのあるユティカは足馴染みも良い上、エイジングも楽しむことができます。
ラストについて解説
ラスト(木型)とは、革靴を制作するための原型のことを指します。木や合成樹脂を用いて作られ、ラストの上からアッパーを形成していきます。デザインや機能を決める重要な要素となるため靴作りには欠かすことができません。
ラストでなにが変わるのか?
シルエットやデザインはラストによって大きく左右されます。つま先がシャープになっていたり幅広でボリュームのあるもの等、ラストによって様々です。特につま先・幅・ヒールのフォルムは一目瞭然で、好みによって「どのラストが使われている革靴を選ぶのか」が変わります。
ブランドの骨格とも呼べるほど大切な存在で、すなわちそれは履く人のサイズにも関わってきます。履いた時にしっかりとしたホールド感が欲しいのか、または少しゆとりを持たせたいのか。足の形は十人十色であるため、その人に合ったラスト選びが必要です。
ALDENでは現在12種類ものラストの取り扱いがあり、ラスト毎にディテールの異なったこだわりが見られます。
豊富なラスト
ラストの種類 | 特長 |
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バリーラスト | ALDENの顔とも言える王道のラスト。名作である「990」にも使用されています。 安定感のあるフォルムがアメトラを漂わせる一方、甲部分は締まりを見せているバランスの良いデザインです。 |
モディファイドラスト | 履いているだけで正しい足型となるように設計されているというモディファイドラスト。矯正靴を改良した背景があり、革靴なのに履き心地が良いと評判なラストです。 土踏まず部分が大きくへこんでいるため、フィット感がよく、歩行の際は足を支えるようにして持ち上げてくれます。 |
アバディーンラスト | ALDENの中でも最古のラストとして知られるアバディーンラスト。スリムなシルエットが特徴で、やや細身で吸い付くようなフィット感のある履き心地が実現しています。 トラッドな雰囲気を持っており、スーツによく合うエレガントなラストです。 |
プラザラスト | ALDENの他のラストとは異なりセミスクエアトゥが特徴のプラザラスト。ノーズが長めに設計されているのもポイントです。 クラシカルな革靴に採用されていて、よりフォーマルな印象の内羽根式のドレスシューズやスリッポンがラインナップに並びます。 |
ヴァンラスト | モカシン縫いのディティールが綺麗に乗るように、つま先部分が真っ直ぐに立ち上がったヴァンラスト。 ALDENが「BROOKS BROTHERS」のためにローファーを手掛けていた時期に作成されたラストで、つま先から踵にかけてしっかりとしたホールド感があります。 |
ミリタリーラスト | 文字通り、第二次世界大戦時に士官クラスが身に付けていたオフィサーシューズのフォルムが由来。甲が低く、丸みの帯びたつま先部分がポイントです。 終戦後、ALDENの倉庫からラストのデッドストックが発掘されたのをきっかけに「4545H(タンカーブーツ)」として発表します。やや狭い作りのため、ハーフサイズアップを選ぶのがおすすめ。 |
トゥルーバランスラスト | モディファイドラストと同じく、矯正靴の役割を持つラスト。ALDENのラストの中でも1番幅広とされていて、多くの人の足に合うような設計がされています。 「405」のブーツは名作映画「インディージョーンズ」の劇中でも登場したことで有名。主演である「ハリソン・フォード」はプライベートでもこのブーツを所持しており、映画では個人でオーダーしたものを着用していました。 |
ハンプトンラスト | ドレスシューズ向けのラスト。内羽根式のストレートチップの革靴がラインナップされており、比較的フォーマルなシリーズと言えます。 本国では人気のラストであり、ビジネスマンに多く愛されています。 |
カプリラスト | 日本では展開の少ないカプリラスト。 ヴァンラストとアバディーンラストの中間のような出立ちをしていて、ボリュームはありながらもトラッドスタイルに合うスマートなフォルムが魅力です。 |
レイドンラスト | バリーラストをベースに幅と高さを細く作りあげたのがレイドンラスト。シャープなフォルムは2アイレットのチャッカブーツと相性が良く、ALDENの代表アイテムになっています。 フォーマルな革靴というよりかはセミカジュアルな革靴に採用されることが多く、オンデニムのようなラフなスタイルにフィットしてくれます。 |
グラントラスト | スタンダードかつ、オールマイティに誰でもフィットするのが特徴のラスト。丸みのあるフォルムはアメトラの革靴らしいクラシカルな印象があります。 クセがなく汎用性も高いので、オンオフ問わず大活躍してくれます。 |
オーリンズラスト | 2020年に初登場したALDEN最新のラスト。レイドンラストをベースにしているのでシルエットは細め。他のラストよりもハーフサイズアップで着用するのがベストです。 レイドンラストではセミカジュアルでしたが、こちらはドレス感が増していて、オフィスカジュアルなスタイリングと相性抜群です。 |
定番人気モデル
ALDENの革靴をご紹介。短靴・ローファー・ブーツなど多種多様なラインナップは、どれを取っても名作と語り継がれています。
990/9901
ALDENの名作であり定番シューズである「990(バーガンディ)」「9901(ブラック)」シリーズ。形はベーシックなオックスフォードタイプで、靴紐を通す羽根部分とアッパーの構造が帆船に似ているため「クリッパー(快速帆船)オックスフォード」とも呼ばれています。
ややぼてっとしたフォルムが特徴の、日常でも汎用性の高いプレーントゥ。 革にはコードバン、そしてバリーラストが採用されています。ALDENを初めて買うという方におすすめな、クセのないシンプルなシューズです。
54321
履き心地の良さと見た目の良さを両立させた「54321」。使われているラストは矯正用の靴に採用されていた「モディファイドラスト」です。幅広であり、土踏まずにフィットしてくれるアーチサポートがあるため革靴でありながら、快適な歩行を実現してくれます。
デザイン面では、トゥ部分にモカシン縫いであしらわれた「Vチップ」がアイコンに。Uチップよりもシャープでドレッシーな印象のあるVチップは、モディファイドラストに合うように作られたもの。そのため機能性だけでなくスタイリッシュさも兼ね備えています。
954/955
「954」ではバーガンディ、コードバンを採用。そして「955」はブラックでカーフレザーを採用しています。素材の違いはあれど重厚な面持ちは変わらず、どちらも長年履き込むことで上品な味を醸し出してくれます。
紐靴とは違った印象を見せるモンクストラップの革靴。フォーマルでも重宝するので、オンオフ問わず大活躍してくれます。またベルト部分には伸縮性のあるエラスティック素材があしらわれており、快適な脱ぎ履きが可能です。
986/987
ラフでありながらもコードバンのラグジュアリーさを持つペニーローファー。「986(バーガンディ)」と「987(ブラック)」はどちらもコードバンとヴァンラストを採用しています。
裁縫にこだわりを見せるこのローファーは、近年増えつつある機械での「モカシン縫い」ではなく、職人による手縫いによるもの。コードバンの表面だけをすくい、縫っていくという手法が使われており機械縫いに比べると、より堅牢性が増すのもポイントです。
563/664
タッセルモカシンやタッセルスリッポンなど様々な呼び名がありますが、実はこのタイプのローファーはALDENが依頼を受けて生み出した革靴です。バーガンディの「563」、ブラックの「664」の両方がコードバンであり、アバディーンラストを採用しています。
ハリウッド俳優である「ポール・ルーカス」がイギリスで見つけたタッセル付きの靴を、アメリカの靴屋で「これをシンプルなデザインにして欲しい」と注文をかけたことがきっかけでした。その靴屋がALDENに制作依頼した結果、タッセルローファーが実現。アッパーに装飾されたタッセルがユニークなタッセルローファーはアメリカで人気に火が付き、その後アイビールックと共に世界でも人気を博しました。
1339/1340
無骨なバリーラストのフォルムとコードバンの質感が相性の良いチャッカブーツ。「1339(バーガンディ)」「1340(ブラック)」で展開されています。
チャッカブーツ特有の足を覆うようなデザインに加えて、くるぶしまであるショート丈のブーツはコーディネートのアクセントにもなってくれます。一見カジュアルではありますが、ALDENならではのリュクスなテイストはスラックスといった、ドレススタイルにもフィットしてくれます。
4545H/4540H
踵周りを少し狭めることで、ブーツをしっかりと支えるホールド感が生まれるミリタリーラストを採用。「4545H(ブラック)」「4540H(バーガンディ)」のタンカーブーツはALDENの他のシリーズとは一線を画した印象があります。
ソール部分には部分的にクレープソールを使用しており、長時間の着用でも疲れにくく、足への負担を軽減してくれています。アッパーにはもちろんコードバンがあしらわれており、重厚感漂うブーツとなっています。
まとめ
最後までお読みいただきありがとうございました。ALDENの長い歴史から使用される革の性質、そしてラストの特徴を見ていきました。ALDENは洗練された素材やラストを用いたこだわりの物づくりからヨーロッパブランドとは違った魅力が詰まっています。一生のパートナーとして、是非ALDENの革靴を選んでみてはいかがですか?
モードスケープではALDENの買取を強化しています。アイテムの価値を適正に反映し、最高額を見出す査定をいたします。ALDENのアイテムを売りに出すか迷っている場合にも、是非モードスケープにご相談下さい。とりあえず値段だけ聞いて検討したいという場合は、LINE査定などで査定額を見積もることも可能です。お気軽にご相談ください。
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モードスケープではALDENの買取を強化しています。ブランドを代表するコードバンモデルは特に高価買取いたします。お買い取りをご検討の際は、お気軽にご相談ください。
ALDENの買取について
この記事を書いた人
小川剛司 (MODESCAPE 編集部)
ライター・ファッションモデル。学生時代のアルバイトからファッションの世界へ。大手セレクトショップの販売員、ECスタッフを経て、長年携わったアパレルの経験と知識を活かしWEBライターに。数々のファッションマガジンサイトで執筆を行い、メンズ・レディース問わずおしゃれを発信しています。現在は韓国を拠点にモデル活動しており、更なるファッション知識を探求中! Instagram:@t_t_k_k_s_s