「ダブレット」の井野将之が2018年「LVMHプライズ」グランプリに -ニュース~WWD-
先月6日、日本で最も影響力のあるファッションメディアの一つであるWWDはタイトルのように報じた。
コレクションや世界のファッション業界で認められたからといって、そのブランドのビジネスがうまくいくわけではない。
ドメスティックブランドが、各国のコレクションでは毎年“高い評価を受けている”と報道されていても、日本で売れている様子が感じられず、二次流通も芳しくないということも、ままある。
とはいえLVMHプライズの受賞は、確実にダブレットにとって、そしてデザイナーの井野将之にとって大きな未来を約束するだろう。
井野将之がグランプリを受賞した、LVMHプライズとは
https://www.instagram.com/p/Bf05JlaH2Px/?tagged=lvmhprize
若手デザイナー育成・支援する目的で創設されたLVMHプライズ。
2014年に始まったこのコンペティションは、18歳以上40歳以下で年2回以上コレクションを制作するデザイナーなら誰でも参加でき、制作するコレクションはメンズ・レディースどちらも対象となる。
審査を担当するのはLVMH所属のデザイナーらのほか、著名なジャーナリスト、スタイリスト、バイヤー、写真家など。
その中には、HAIDER ACKERMANN(ハイダー・アッカーマン)、J.W.ANDERSON(J.W.アンダーソン)、MARC JACOBS (マーク・ジェイコブス)、そしてKARL LAGERFELD(カール・ラガーフェルド)など、錚々たる面々も名を連ねる。
グランプリを受賞すると、賞金30万ユーロ(日本円で約4000万円程)と、LVMHが選定するスペシャリストらの指導を受けることができる。
井野の受賞した今年のコンペティションでまだ5回目の開催だが、この賞で注目されれば、ファッションデザイナーとして国際的な飛躍の足がかりとなるのは間違いない。
LVMHプライズの過去の受賞者
まだ5回と、創設されて間もない賞ではあるが、受賞者やファイナルにまでノミネートされたデザイナーを振り返ると、LVMHプライズがいかに影響力のある賞かが伺い知れる。
例えば、第一回に特別賞を受賞したのは、HOOD BY AIR(フッドバイエアー)のシェーンオリバー。NY発のラグジュアリーストリートブランドで、このカテゴリのブランドを牽引する存在となり、ASAP ROCKY(エイサップ・ロッキー)やG-DRAGON(ジードラゴン)といった著名人も愛用していた
前回第4回には、デムナ・ヴァザリアのBALENCIAGAでデザイナーを努めたマリーン・セルのMarine Serreがグランプリを受賞。
他にも、FACETASM(ファセッタズム)の落合宏理、sulvam(サルバム)の藤田哲平といった、今、世界で注目を集める日本のデザイナーや、美しいテキスタイルで話題を呼ぶKOCHE(コーシェ)のクリステル・コーシェも、ノミネート経験がある。
このように過去この賞に関係したデザイナーを見ると、この賞に注目されるということは、その後ファッション業界で活動するに当たり大きなアドバンテージとなり得るということがわかる。
doublet(ダブレット)、そして、井野将之とは
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井野将之は、1979年、群馬県生まれ。
東京モード学園を卒業した後、アバハウスインターナショナルでデザイナーを経験し、ミハラヤスヒロで企画・生産を担当するなど、アパレル業界で複数のキャリアを積む。
自身のブランド、ダブレットの設立は2012年。パタンナーの村上高士とともに立ち上げた。
今回の受賞に至るまでに6年を経てているが、スタート後すぐの2013年に「2013 Tokyo新人デザイナーファッション大賞」で、ビジネス支援デザイナーに選出されるなど、早くから頭角を現していた。
ダブレットのコンセプトは、「違和感のある日常着」。
ベーシックウェアに、日常の視点を変えるアレンジを加えたアイテムを作るのが得意なストリート映えするブランドだ。
https://www.instagram.com/p/BheU0P4lS0U/?taken-by=__doublet__
近年のストリートブームにブランドの価値や勢いが後押しされた影響はあるとは思うが、元々ダブレットの服がストリートと親和性の高いものだったことが、飛躍の要因と言える。
実際、井野は世代的に、日本の第一次ストリートウェアブームの全盛期に思春期を過ごしているため、高校時代はUNDER COVER(アンダーカバー)やGENERAL RESEARCH(ジェネラルリサーチ)に心酔し、高校時代のアルバイト代はほとんど洋服に費やしていたという。
ファセッタズムの落合などと同世代だが、藤原ヒロシや高橋盾らが活躍した時代にファッションの原体験を持つデザイナーの活躍が目覚ましいのも、今の日本のファッションシーンの特徴だ。
日本を代表するブランドへ
日本では、アンダーカバー、NUMBER NINE(ナンバーナイン)などのように、コレクションで成功し、人気の面でも世界で支持を得るブランドはまだ少数だ。
’90年代から日本のストリートファッションシーンを作り上げ、牽引してきたそれらのブランドのデザイナーたちも未だ現役。コレクションで活躍している。
彼らの服は、世界的に影響力のある、Kany West(カニエ・ウエスト)やPharrell Williams(ファレル・ウィリアムス)、エイサップ・ロッキーといったアーティストたちに愛され、いまやアーカイブピースまで海外で人気になっているほど。
近年は、ファストブランドの高品質化や各ブランドの均質化など、さまざまな影響で苦戦が強いられるアパレル業界であるが、井野を始めとした日本のストリートファッション全盛期のブランドに影響を受けたデザイナーが台頭してきているのは、日本のファッションの未来に対して極めてポジティブなことだと思う。
今回の受賞を足がかりに、ダブレットと井野将之には、ぜひともアンダーカバーやナンバーナインのような支持を得るブランドなってほしいと願うばかりだ。
この記事を書いた人
MODESCAPE
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