patagonia(パタゴニア)はアメリカのカルフォルニア州で設立したアウトドアブランドです。
高品質でデザイン性に優れたプロダクトは世界中で人気を博し、また、環境保全に対する取り組みへの意識も高い企業です。
この記事では、そんなパタゴニアの創業の歴史や創業者について、また、賛否両論はありますが環境保全企業となったきっかけに触れていきたいと思います。
創業の原点
パタゴニアの創業者、イヴォン・シュイナードは1953年、14歳の頃に参加していた狩猟団体で、断崖絶壁に作られるハヤブサの巣を見つけるため、岩壁の懸垂下降の技術を学びます。
次第に降りるだけでなく、登る技術も習得し、以降はクライミングに熱中。貨物列車に乗り込んで米国各地のクライミングスポットに出かける生活が始まります。
本格的にクライミングにのめり込む中でイヴォンは、登攀の際に必要なピトンが、使い捨てであることに疑問を感じます。
ピトンとは、岩の隙間に打ち込んで、ロープやカラビナを引っ掛け援助支点にする道具ですが、打ち込んだら最後、回収することはなく半永久的に岩場に残ることになります。
そこでイヴォンは、繰り返し使えるピトンを廃材や有り合わせの材料で自作してみることにしました。
実家の裏庭で制作されたイヴォンのピトンは、仲間うちで評判になり、やがて噂は瞬く間に広まって注文が殺到。
クライミングに出かける車の荷台にピトンを積み、それを売りながら遠征を繰り返して生計を立てました。ピトンの製作はいつの間にか、彼のビジネスになっていたのです。
やがて手作業での生産だけでは需要をまかないきれなくなり、クライマーであり航空技師だった、トム・フロストとパートナーシップを結び、1965年に会社を立ち上げます。
「シュイナード・イクイップメント」と命名されたその会社は、パタゴニアの前身企業です。
そうして、ピトンの生産に必要な機械や素材を揃え、それまでに世に出ていたクライミングのあらゆる道具を軽量、頑丈、低コストに改良しました。
環境保全企業の萌芽
1970年までに、全米最大のクライミングギアメーカーとなっていたシュイナードイクイップメントでしたが、ある時期イヴォンとトムがクライミングの人気スポットであった、ヨセミテ国立公園の岩を訪れたところ、数年前まで自然のままだった岩が、クライミングの人気ルートとなったことで深刻なダメージを受けていることを目にしました。
イヴォンは、自らクライミングを楽しむどころか、クライミング道具を作って世の中に普及させてきたことで、自然を壊す張本人になっていたことを自覚します。
それをきっかけに、イヴォンはピトンの製造を中止します。
代わりに、シュイナード・イクイップメントは手で抜いたり押し込んだりできるチョックという道具をカタログで発表。
カタログには、「クリーン」というキーワードを基にしたクライマーのエッセイを同時に掲載し、
元々自然を愛していた多くのクライマーの共感を集めることができたのか、ピトンはすぐに廃れ、チョックが普及します。
この当時から、パタゴニアが環境保全企業となる萌芽が芽生えていたのです。
シュイナード・イクイップメントからパタゴニアへ
順調に経営を続けてきたイヴォンですが、クライミングギアの製作はそれほど利益になるビジネスではありませんでした。
1970年に、イヴォンはスコットランドにクライミング旅行に出かけると、同地で盛んなラグビーのシャツをアメリカに持ち帰りました。
ラグビーシャツの過酷な使用に耐える縫製はクライミングでも品質を発揮し、高い襟は重いギアスリングが首に食い込むのを防ぎました。
そして、太いカラフルなボーダー柄は、当時はスポーツウェアといえば黒がグレーばかりだった中で新鮮に感じられ、イヴォンはクライミングでラグビーシャツを着ることを好みました。
するとすぐに仲間たちが欲しがり、試しに会社で、イギリスのアンブロ社から数着輸入すると瞬く間に完売。
その後もイギリスのみならず、他の国の在庫をも輸入し、アメリカ中でラグビーウェアがブームになります。
クライミングギアのビジネスを下支えする意味でアパレルの事業を続けましたが、
次第に規模が大きくなってアパレル部門にネーミングが必要なほどになった時、「patagonia(パタゴニア)」の名前が誕生したのです。
パタゴニアという南米の極地は大自然を想起させ、世界中の言語で発音しやすかったことから、世界的ブランドとなった今でも、ピッタリのネーミングですね。
おしまいに
ジル・サンダーが愛用していたことからファッション界でもブームになるなど、機能性のみならず高いデザイン性も魅力のパタゴニア。
世界で初めてシンチラフリースを開発したり、コットン製品にはオーガニックコットンを使ったりと、先進技術と環境に対する企業姿勢でもユーザーの支持を獲得しています。
アウトドアブランドとして日本での知名度が殊に高く、ブランドアイテムに興味のない層をも魅了しています。
この記事を書いた人

MODESCAPE
ブランド服専門の買取店モードスケープです。トレンドから過去の名作まで、ワクワクするブランドアイテムを販売・買取しています。ファッションに関する様々な記事・コラムを配信しています。