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縮絨加工の全貌:歴史、技術、そしてケア方法

縮絨加工の全貌:歴史、技術、そしてケア方法

縮絨加工の全貌:歴史、技術、そしてケア方法

製品加工には古くから続く伝統的な技術など多数存在しますが、COMME des GARCONSが先駆者と言われている加工技術が「縮絨(しゅくじゅう)」。デザイナーズブランドに多く見られる手法の一つで、特にウール製品に多く用いられています。

縮絨と聞いてもあまり馴染みのない方も多いと思いますので、この記事では縮絨の歴史や特徴、そしてケア方法について解説いたします。この記事を通じて、縮絨加工について理解を深めていただければ幸いです。最後までご覧ください。

縮絨加工とは

縮絨加工がどのようにして誕生したのかを紐解いていきましょう。製造のプロセスに加えて、ファッションアイテムとして認知されたきっかけとなるCOMME des GARCONSでのコレクションについても解説します。

縮絨加工

古代~近代までの歴史

古代

縮絨加工とは繊維を収縮させて生地の密度を高めることで、柔らかさと耐久性を向上させる技術であり、古くから利用されてきた手法。その中でも聞き馴染みのある「フェルト」はこの加工を代表する生地です。

縮絨加工の起源は紀元前に遡ります。中央アジアの一地域である「アルタイ地方」のパジリク古墳群から鞍覆や敷物・衣類などの縮絨加工された製品が発掘されました。これらは紀元前5~4世紀のものとされ、縮絨加工の存在を示す重要な証拠となっています。古代中央アジア周辺の遊牧民は、移動生活に適した耐久性と防寒性をもつ道具を愛用しており、モンゴルの遊牧民の住居として有名な「ゲル」もフェルトで作られています。

日本では正倉院に所蔵されている「毛氈(もうせん)」が有名。最古の毛氈は弥生時代の頃、魏から伝わったとされ、主に儀式や装飾用途に使用されてきました。古代における縮絨加工は繊維素材の可能性を引き出し、さまざまな用途に応用されてきた技術であったといえます。

中世

中世に入ると、縮絨加工はさらに発展。ヨーロッパを中心に技術が広がりました。この時代の縮絨加工は国よって違いがみられ、さまざまな製法が試されます。

人々から集めた尿を発酵させ、そこへウール生地を浸し、7〜8時間踏み続けることでフェルト化させるというような製法があります。イギリスで実際に行われていたこの製法は今聞くと衝撃的ですが、当時としては画期的だったもの。なぜなら、着心地や機能性に大きく関係しているからです。この時代の天然ウールは油分を含んで重くなっており、お世辞にも快適と呼べる製品ではなかったそう。そのため、アンモニア成分で油分を分解させる必要がありました。

その効果によって、フェルトの軽量化が実現。さらに、目の詰まった生地は保温性と柔らかさが、以前のものと比べると大きく改善されました。この製法は過酷な労働を伴いましたが、機能的な仕上がりが得られるため、広く普及していったといいます。中世の縮絨加工は多様な発展を遂げ、繊維産業において欠かせない技術として重要な位置を占めていました。

近代

縮絨加工は産業革命に伴う機械化の恩恵を受け、大量生産が可能になりました。この技術革新により、縮絨加工を用いた製品は日常品から産業用資材にまで広がります。ファッション業界でも、縮絨加工による独特な風合いを生かした製品が注目を集めます。特に、1994年にCOMME des GARCONSがコレクションで発表した、縮絨加工を施した斬新なデザインは業界に衝撃を与えました。

ウールに加え、合成繊維を活用した縮絨加工が近代に発展し、より耐久性の優れた製品が登場。リサイクル素材を使ったフェルトもあり、縮絨加工製品はサステナブルを意識したエコな素材として再評価されています。このように、近代の縮絨加工は伝統と革新を融合させ、繊維産業の未来を切り開く技術として発展を続けています。

縮絨加工のプロセス

縮絨加工には主に、ウールやカシミヤなど「紡毛紡績」が用いられます。ここではウールを例に挙げて説明していきましょう。縮絨加工のプロセスには大きく、

生地を湿らせる  
摩擦を与える
乾燥させる

の3つに分けることができます。

ウールは水を吸うと繊維表面の「スケール」と呼ばれる鱗状の構造が開き、互いに絡み合いやすくなります。繊維が絡み合うことで生地全体が収縮し、密度の高い生地が形成されるのです。この特性を活かした加工が縮絨加工であり、独特の風合いがポイント。

次は、手作業や専用の機械で生地に摩擦を与えます。湿ったウールに圧力や摩擦を加えることで、繊維同士がさらに絡み合い、より頑丈な生地に。ですが、硬すぎるとゴワゴワになったり、使いづらくなるため、程度の調整が必要です。

最後は乾燥。この段階で生地の形状が安定し、縮絨加工による特徴的な風合いが完成します。これらプロセスにより、生地は滑らかで暖かく、耐久性も高くなります。また、加工の時間を長くしたり、乾燥機や水の温度を上げたりすることで違った風合いを作り出すことも可能です。

縮絨加工の先駆者はCOMME des GARCONS?

COMME des GARCONSが縮絨加工の先駆者と称される理由は、その革新的なデザインアプローチと素材の可能性を引き出した技術力にあります。前述したように、COMME des GARCONS HOMME PLUSの1994年FWコレクション「Off Beat Humor」で、縮絨加工を施したウール素材のウェアを発表しました。

これにより、服の一部が意図的に縮み、独特の立体感やゆがみが生まれるという、従来の洋服には見られなかった新しいデザイン表現を確立。このアプローチは、縮絨加工を単なる素材加工技術ではなく、ファッションの芸術的表現として昇華させた点で画期的でした。この伝説的なコレクションは縮絨期とも呼ばれ、当時のアイテムは今でも高額で取引されています。また、同年のウィメンズコレクションでも縮絨加工のアイテムが発表されており、日本のファッション業界に大きな衝撃を与えました。

デザイナー川久保玲の作品は、アシンメトリーや脱構築的なスタイルが特徴的です。これらの縮絨加工されたアイテムも、彼女の代表的なクリエイションの1つといえるでしょう。ちなみに2022年FWコレクションでふたたび、縮絨期を彷彿とさせるアイテムが登場。初登場から30年以上経った今でも、ファンを歓喜させるのコレクションとなりました。このように、COMME des GARCONSは縮絨加工を革新的なファッション表現に発展させた先駆者として、大きな評価を得ているのです。


縮絨加工の特徴

縮絨加工された製品はその特性からさまざまな用途に使用されています。それらを紹介するとともに、縮絨加工のもつメリット・デメリットについても解説します。

縮絨加工が生み出す製品の雰囲気

縮絨加工を施した製品は独特の温かみと柔らかさを持つのが特徴です。生地の密度が高まり、滑らかでマットな質感が加わることで、視覚的にも触覚的にも優しい印象を与えます。

また、加工による微妙なゆがみやシワ感は、手作り感やナチュラルな雰囲気を演出。こうした質感はリラックス感やカジュアルさを求めるデザインに適しており、素朴さや安心感のあるイメージを生み出します。そのため、こなれ感のあるスタイリングやコージーなコーディネートに非常にフィットするといえます。

さらに、縮絨加工で生まれる生地には細かな毛羽立ちがみられ、デザイン次第ではモダンな印象や高級感を表現することも可能です。縮絨加工の製品は幅広いスタイルに対応し、多様な雰囲気を持つ魅力的な存在といえるでしょう。

縮絨加工がよく用いられるアイテム

上記に挙げた特性を活かして、さまざまなアイテムに用いられます。特に、保温性や柔らかさが求められるアウターやコート、冬用のウールパンツなどに多く使用されます。また、軽量かつ暖かいフェルト素材は、帽子、手袋、マフラーといった冬小物にも最適です。

インテリアアイテムを例に出すと、座布団やラグ、クッションカバーなどにも応用され、暖かみのある空間を演出してくれます。一方で、アートやクラフト分野でもフェルトが利用されることも多く、インテリアのデコレーションアイテムとしても人気があります。実用性とデザイン性を兼ね備えている汎用性の高い製品として、注目されています。

なぜウール製品に多く用いられるのか

縮絨加工にウール製品が多く用いられる理由は、プロセスでも述べたように、ウール特有の構造と特性に関係があるからです。ウールの繊維にみられるスケールは水分や熱、摩擦を加えることで鱗状のキューティクルが開き、繊維同士が絡み合いやすくなります。この特性を縮絨と呼び、こうしたウールの性質が縮絨加工に最適な素材であることを示しているのです。その結果、アパレル業界をはじめとした多くの用途に活用されています。

縮絨加工のメリット

保温性  
耐久性  
防水性  
柔軟性

縮絨加工には、生地の密度を高めることで得られる多くのメリットがあります。はじめに保温性が挙げられるでしょう。特にウール素材ではこの加工によって空気の層が形成され、熱を閉じ込める効果が強化されます。これにより、防寒具に適した衣類や道具として用いられました。冬にはマイナス10度を下回る地域である中央アジアで、古代から存在していたのはそのためです。

次に、繊維の密度が上がることで耐久性が向上します。生地は引っ張りや摩耗に強くなり、長期間の使用にも耐えられるようになります。

また、防水性の向上も注目すべき点といえるでしょう。少量の水滴であれば弾きやすくなりますが、完全な防水ではないため雨天時には注意が必要です。

柔軟性についても、縮絨加工は生地のしなやかさを高める効果があります。柔らかさとしなやかさをもたせる仕上がりは、衣類としての快適な着心地が実現します。こうした柔軟性はファッション性と実用性を両立させる重要な要素です。

縮絨加工のデメリット

テカリが出てくる  
加工しすぎると硬くなる  
製品が縮む可能性

縮絨加工には多くのメリットがありますが、同時にいくつかのデメリットも存在します。まず、加工による摩擦や圧力が強すぎると、生地表面に「テカリ」と呼ばれる光沢感を帯びることがあります。この現象は特に長時間の摩擦を伴う工程で起こりやすく、風合いに影響を与えるため、デメリットといえるでしょう。

さらに、縮絨加工の強度を高めすぎると、生地が硬くなり、柔軟性が失われるケースも。強い縮絨を施した生地は密度が非常に高くなりますが、その分動きにくさや重さを感じる仕上がりになるため、軽やかさや快適さが求められる衣類には適さない場合があります。この硬さは製品の用途によっては利点にもなりますが、日常的な着用ではストレスを感じてしまう可能性も否めません。

また、加工中に繊維が過度に縮むと、製品が予定よりも小さくなるリスクも考えられます。この点は消費者に直接影響することは少ないものの、加工条件の精密な調整が求められる要因となっており、技術者の熟練度に依存します。一方で、この性質を逆手に取ったデザインが施される場合もあり、一長一短といえるでしょう。


縮絨加工製品のケア方法と注意点

縮絨加工を施した製品は、その特性を活かすために適切なケアが必要です。素材ごとにケア方法が異なるため、ウールやカシミヤなどの天然素材と、ポリエステルなどの合成繊維に分けて解説します。

ウール(カシミヤ・アルパカ含む)製品のケア方法

ウールを使用した縮絨加工製品は、柔らかさと保温性を保つために、慎重な取り扱いが求められます。

ウール

洗濯方法

縮絨加工された衣類を洗うときは基本的に手洗い推奨です。
30℃以下のぬるま湯に中性洗剤を溶かし、製品を優しく押し洗いします。ここで強く擦ってしまうと繊維がさらに絡まり、生地が硬くなってしまう可能性があるため、注意が必要です。
洗濯機を使用しても問題ない場合は、デリケートコースを選び、ネットに入れてから洗いましょう。

乾燥方法

吊り干しは生地を伸ばしてしまう可能性があるのでNG。直射日光の当たらない陰干しを推奨します。形を整えてから平干しで自然乾燥させます。

保管方法

ウールは害虫が好む繊維なため、保管には注意が必要です。密閉されたプラスチックケースに入れると湿気がこもり、カビが発生してしまうケースも。虫食いとカビ防止のため、防虫剤を入れた通気性の良い布袋に入れてから保管するようにしましょう。

合成繊維(ポリエステル)製品のケア方法

合成繊維を使用した縮絨加工製品は、ウールより取り扱いやすい素材といえます。。

ポリエステル

洗濯方法

通常の家庭用洗濯機で洗える場合が多いですが、洗濯表示の確認は必須です。ポリエステルは汚れや臭いを吸収しやすい特性があるため、汚れた衣類と一緒に洗わないように気を付ける必要があります。

乾燥方法

天然素材系と同じく、乾燥機は避け、自然乾燥を基本とします。風通しのいい日陰で、平干し推奨です。

保管方法

虫食いの心配がないため防虫対策は不要ですが、ポリエステルは紫外線による変色が起こりやすい素材です。直射日光はもちろん、蛍光灯の明かりも避け、湿気が少ない場所で保管するようにしましょう。


まとめ

最後までご覧いただきありがとうございます。縮絨加工は、古代から現代まで続く伝統的な技術であり、その魅力と実用性は今もなお健在です。ウールやカシミヤ、アルパカなどの素材に施されることで、保温性や耐久性が向上し、私たちの日常生活に欠かせないアイテムとなっています。適切なケアを行うことで、縮絨加工製品は長く美しい状態を保つことができます。ぜひ、あなたの生活にも縮絨加工製品を取り入れて、その魅力を実感してみてください。

モードスケープではクリーニングやお直しが必要なものでも、可能な限り良いお値段をおつけできるように吟味しながらお買取りしております。汚れやダメージがあるものでも、リペアを施して販売することも可能ですので一度ご相談ください。 とりあえず値段だけ聞いて検討したいという場合は、LINE査定などで査定額を見積もることも可能です。お気軽にご相談ください。

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この記事を書いた人

小川剛司 (MODESCAPE 編集部)

ライター・ファッションモデル。学生時代のアルバイトからファッションの世界へ。大手セレクトショップの販売員、ECスタッフを経て、長年携わったアパレルの経験と知識を活かしWEBライターに。数々のファッションマガジンサイトで執筆を行い、メンズ・レディース問わずおしゃれを発信しています。現在は韓国を拠点にモデル活動しており、更なるファッション知識を探求中! Instagram:@t_t_k_k_s_s

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