MAATEE&SONSが洋服好きの感覚に訴えかける“何か”
普通なようで普通でない、品のある表情が魅力的なMAATEE&SONS。「俺のチノ」や 「ひょっとこ」などアイテム名にユーモアがあり、また公式SNSでも独特なアイテム紹介など作品に対するデザイナーの熱い想いを感じられます。
この記事では、ファッション感度の高い方から高い支持を得るMAATEE&SONSについて、ブランドの背景やデザイナーの生い立ちに迫ります。また、先述したようなユーモアのあるアイテムも複数ご紹介しますので、是非お楽しみください。
MAATEE&SONSとは?
服好きが愛するブランド「MAATEE&SONS」。「服オタク」とも呼ぶことのできる作り手の熱意はアイテムの随所にあらわれており、唯一無二な作品となっています。
出典 prtimes.jp
愛着が持てる日常着
2019年FWからスタートしたMAATEE&SONS。「大の大人が大真面目に、良い服を提案する」ということをコンセプトに、斬新なクリエイションでアイテムを展開しています。裁縫やディテール・素材に拘りが見られ、普遍的なようで普遍的でない「愛着が持てる日常着」を提案。瞬く間にファンを獲得してきました。
ブランド名はデザイナーである松村氏の祖父と父が運営していた呉服屋の名前が由来。「松貞呉服店」の松貞(マツテイ)から「MAATEE(マーテー)」を取り、それを自身のキャリアスタートの土地であるニューヨークでポピュラーな名前の「マーティー」へと変換しました。そして「先祖代々から受け継ぐ服飾史」という経緯を込めて「& SONS」を付け加え「MAATEE&SONS」というブランド名が出来上がりました。略して「MAATEE」とも呼ばれています。
ドレスとカジュアルの融合
通常「きれいめなドレスアイテム」と「ラフなテイストのカジュアルアイテム」は製法や雰囲気も違うため、混ざり合うことはありません。ですがその表裏のアプローチを上手く融合させて、1つのアイテムとして成立させてしまうのがMAATEE&SONSの魅力とも言えます。そこで重要となってくるのが素材の選定です。MAATEE&SONSではその細かなニュアンスを表現するべく、これらの素材が採用されています。
素材 | 特徴 |
---|---|
シルク | ブランドの定番でもあるウォッシャブルシルク。デリケートな素材であるシルクを家庭でも洗える仕様にした優れものです。シルクは肌への刺激が少なく、放湿性も兼ね備えているため夏の暑い季節にも活躍してくれます。さらっとした着心地と、ひんやりとした手触りが秀逸です。 |
カシミヤ | 暖かくて軽い、そして高い保温力を持つ冬の装いを代表する高級素材であるカシミヤ。MAATEE&SONSでもセーターやベスト・ジャケットなど様々なアイテムに採用されています。強圧縮加工で毛羽立たせたフワフワとした着心地のものや、カシミヤ以上の風合いをテーマとした光沢のあるシャギーなものなど、バリエーション豊富です。 |
GIZAコットン | エジプト・ギザ地方で栽培がされているコットンで「世界3大コットン」の中の1つでもあります。長繊維綿に分類され、繊維が長いほど高品質。肌触りはシルクを連想させるほど滑らかで、刺激の少ないことが特徴です。これは繊維の先が丸くなっているからで、肌が弱い人でもストレスなく着用することができます。それに加えて耐久性の高さもポイント。繰り返しの洗濯でもへたらず、長く愛用することができます。 |
SUVIN GOLD SUPREME | 「幻のコットン」との呼び声も高い、SUVIN GOLD SUPREME。劣性遺伝のあるSUVIN種のファーストピックしたもののみがSUVIN GOLD SUPREMEとされ、製品として出回るのがとても少なく希少性があります。光沢のある生地感や滑るようなタッチは他のコットンに比べると一線を画す素材です。MAATEE&SONSでは主にシャツに採用されており、手に取っただけで「上質なもの」だと理解することのできる貫禄があります。 |
強撚ビエラコットン | 「強撚」とは糸を強く撚って作ることを指し、そうして出来上がった糸を「強撚糸」と呼びます。強撚することで生地には耐久性が生まれ、吸湿・速乾性に優れるといった特徴があります。触れると独特なシャリ感が伝わり、涼しげな印象もポイントです。そんな強撚したコットンで織ったビエラ素材はしなやかなドレープが魅力。ドライなタッチとコシのある生地はエレガントな素材を演出してくれます。 |
強撚ZZブロード | 糸を撚った傾きがZに似ていることから名付けられたZ撚り。強撚かつ双糸を同一方向に撚ったものが「強撚ZZ」であり、よりシャリ感が生まれます。また同一方向なため、使えば使い込むほど糸がほつれ、肌馴染みの良い生地へと経年変化していきます。 ブロードなため美しい光沢と表面に浮かぶ細かな畝が特徴です。 |
リネンジョーゼット | ジョーゼット生地は従来、シルクやレーヨンなどを用いて織られ、生地の向こう側が透けて見えるくらいに薄い生地となっています。表面に浮かぶシボの模様が秀逸で、清涼感や優美さを表現するのに最適と言えます。MAATEE&SONSのリネンジョーゼットでは文字通りリネンを採用。その繊細なディテールは残しながら、リネンを使ったタフな生地で、長いシーズン愛用できるものとなっています。 |
細番手LINEN平織ガーゼ | 糸の太さの単位を表す「番手」は数値が大きいほど細くなっていきます。そんな細番手のリネン糸を使って作る「ガーゼ生地」。風合いは柔らかで肌馴染みがいいのが特徴です。また軽くふんわりとしているため、着用時もストレスがなく、空気を纏っているかのような感覚。リネンのガーゼ生地なので吸水性と通気性も良く、夏場の暑い季節には重宝します。 |
Wool Super 160’s | 「Super」とは「国際羊毛繊維機構(IWTO)」と「ウールカンパニー」が定めたラベリングシステムであり、ウールの品質を表すワードとなっています。簡単に言うと「Superの後に続く数字が高いほど、高級な羊毛が使われている」ということ。1gあたり160本もの繊維が含まれていて、発色が良く軽くしなやかな生地になります。また艶感があるためラグジュアリーな印象も兼ね備えています。 |
16.5マイクロンのウール | マイクロンの数値は小さくなっていくほど繊維は細かく、感触の良い上質なウール生地になります。数値毎に名前もあり、大体16.5〜17.5マイクロンのものは「スーパーエクストラファインメリノ」と呼ばれています。カシミヤの繊維は13〜16マイクロン程度であることから、ウールでありながらカシミヤと同程度の品質を持っていると言えます。 |
オリジナル素材 | MAATEE&SONSではオリジナルの生地も展開しています。ユニークなアイテムの雰囲気にマッチした生地を採用し、よりブランドの世界観を高めています。中でもシルクとナイロンの混紡生地は秀逸で、主張しすぎないマットな質感ながら上品なムードがあります。 |
デザイナー:松村大基
代々受け継がれている老舗呉服屋をルーツに持ち、ニューヨークでのブランド立ち上げを成功させた、特殊な経歴を持つデザイナー。モノづくりには「オタク」と呼べるほどの熱量があり、MAATEE&SONSの公式インスタグラムではその片鱗を感じることができます。
経歴
1981年、東京生まれ。松村氏は青山学院大学を卒業後、大手服飾店でキャリアを積みます。その後はニューヨークにある「ファッション工科大学(FIT)」でファッションを学ぶために渡米。卒業後、ニューヨークで2010年FWから「tim.」を立ち上げることになります。ファーストシーズンから「BARNEYS NEWYORK」や「OPENING CEREMONY」で取り扱われており、高い評価を受けていました。
tim.は2018年FWのコレクションをもって休止することになりますが、2019年にMAATEE&SONSをスタート。松村氏が作りたい、ニッチなアイテムを展開していきます。実家が呉服屋を営んでいたという背景から、歴史的資料や伝統的な洋服に触れることが多く、それらはモノづくりに大きく影響されています。「基礎となるテーラリングを祖父や父から学び、基本をきっちりと踏襲した上で遊びを加える。」それがMAATEE&SONSにしか出せない、余裕が感じられる遊び心の効いたアイテムなのです。
SNSでのアイテム解説
MAATEE&SONSの公式インスタグラムは松村氏の情熱が感じられると話題です。アイテムを紹介すると同時に、そのアイテムに対する真っ直ぐな思いが書かれているのです。普段あまりメディアへ露出することはありませんが、デザインの経緯や詳細を素直かつ詩的に綴っており、ユーモア溢れるものとなっています。
文章を読んでいるだけでデザインへの拘りが感じられ、アイテムを実際手にとってみたいと思わせるほどの高揚感があります。生地を独特な名称で呼んでいたり、松村氏のお気に入りのディテールやデザインを知ることができたりと、とにかく読み応えがあります。またアイテムの着こなし紹介や製品の取り扱い・経年変化などに触れられているのも嬉しいポイントです。
ユーモア溢れるアイテムたち
正反対な性質のものを組み合わせて作るデザインは秀逸。素材選びにも抜かりはなく「見た目が美しく、着心地も良い」といったアイテムが並びます。また、MAATEE&SONSならではの訴求力のあるユニークなネーミングにも注目です。
「俺の」シリーズ
俺のCHINO-PAN
MAATEE&SONSの定番アイテムである「俺のCHINO-PAN」。通称「俺チノ」。元々、松村氏が穿きたいと思うチノパンがなく「それなら自分で作ろう」と構想されて生まれたのがこのパンツ。腰周りにゆとりを持たせたツータック仕様で、テーパードタイプのシルエットをしています。フロントにある小さなループはベルト位置を固定する「ピンループ」というパーツで、そのディテールからも分かるように、通常のチノパンとは違ってスラックスのようなムードがあります。毎シーズン、カラーや素材を変えてアップデートし続けている人気アイテムです。
俺のGUN-PAN
こちらも人気品番であるミリタリーパンツ。いわゆる「軍パン」なのですが、かといって6ポケットではなく、その素材になる糸も通常の軍パンでは見られない仕様になっています。ですが表素材はヴィンテージのグルカパンツをもとに制作しており、MAATEE&SONSらしいリアルなモノづくりがされています。独特な風合いを出すためにコットンを2種類使用。品質の良い糸とあえて粗野な糸を組み合わせて織ることで、立体感のある生地に仕上げています、こちらのアイテムもシーズン毎に素材やシルエットに若干の変化が加えられています。
永遠SLACKS
流行り廃りを感じさせないベーシックなデザインが、ネーミング通り「永遠」なMAATEE&SONSのスラックスストンと落ちるストレートなシルエットで、ワイドやテーパードとはまた違ったスタイリッシュな印象があります。強撚したウール糸を採用しているので肌触りにシャリ感があり、夏でも快適な履き心地に。表面に薄らと浮かび上がるユニークなムラは、濃い色と淡い色の糸を織り交ぜることで表現しています。どのようなトップスとも相性が良く、シーズン問わず様々なスタイリングにもマッチ。
ひょっとこ
表面はリネンに撚糸を加えた素材で、ザラっとしたドライな手触りが特徴。その反対に裏面にはフィラメントシルクにコットンを巻き付けて強撚した素材が使用されており、滑らかな手触りに。ニット生地なのに表面と裏面で素材が変わるこの独特な編み方は「プレーティング」や「ひょっとこ」と呼ばれていて、アイテム名の由来にもなっています。両面があるためリバーシブルで着用が可能。表面と裏面では表情がガラリと変わるので、1枚で2WAYのコーディネートを楽しむことができます。
ドS LINEN
驚くほどの軽量さと涼しさを兼ね備えたMAATEE&SONSのリネンシャツ。極細のリネン糸を用いたガーゼ生地で、吸水・速乾性に優れています。その軽さや風通りの良さは極細の糸を使うことで実現していて、工程に時間を要します。細く弱いため撚っている最中に簡単に切れてしまったりと、職人泣かせの生地でもあるのです。だからこそ「ドS」と名付けられたユニークな経緯もあります。生地が決して脆くなるわけではなく、丈夫で手洗いが可能。半袖の開襟タイプや長袖のプルオーバータイプなど幅広く展開されています。
ELIZABETH エリザベス
ドレスシャツをカジュアルに落とし込むというテーマで制作されている「ELIZABETH」。MAATEE&SONSの定番アイテムで、シーズン毎に色々な生地や柄、カラーで展開しています。ドレスライクで凛とした雰囲気がありながら、ゆったりとしたリラックスなデザイン。安易にオーバーサイズという訳ではなく、緩急のメリハリがしっかりと付いた大人なシルエットと言えます。クラシカルなディテールが採用されており、背中部分に伸縮性を持たせた「スプリットヨーク」や裏前立てとも呼ばれる「フレンチフロント」など、細部に拘りが見られます。
LYAN ライアン
ワイドスプレットカラーが印象的なブロードシャツ。カジュアルなアイテムのディテールとしてあまり見られない襟型をあえて採用した、MAATEE&SONSらしいアイテムです。生地はハリのあるブロード生地を採用。Z撚りが2つ組み合わさった「ZZ撚り」で作られた生地は高密度でコシを感じられる手触りが特徴です。使い込むことで糸がほぐれていき、生地が身体に馴染んでいく経年変化も楽しむことができます。
CHARLES シャツ
襟がやや寝ているタイプで、MAATEE&SONSの定番である「ELIZABETH」と比べる台襟が低く、着丈も短めの作りになっています。よりカジュアルな面が強く出ていて、普遍的でミニマルなシャツと言えます。シーズンによって採用される素材も変わり、シルク・コットンの混紡素材のものはマットな見た目で上品な印象があります。また「Suvin Supreme」と呼ばれるコットンツイル生地のものは、ツイルとは思えないほど表面がとても緻密で、しなやかな作りになっています。
チグハグWESTERN
ウェスタンシャツをモチーフとした「チグハグWESTERN」。従来のウェスタンシャツでは縦長のフォルムですが、現代版にアップデートしたリラックスな作りとなっていて、着丈はやや短く、身頃や肩部分にゆとりがあります。ライトオンスのヴィンテージ感溢れるデニム生地ですが、製法はドレスシャツ寄りに仕立てられており、イタリアのテーラーで用いられるソーイングが見て取れます。カジュアルなのにドレスシャツという点が「チグハグ」であり、ウィットに富んだアイテムです。
PITA TEE
90年代にトレンドとなったピタTからインスパイアを受け、製作したPITA TEE。松村氏が所持している当時のピタTをベースにパターンが作られており、リブネックが太めで、袖の付け根にあたる袖山部分はやや低めです。一見するとUSA製のTシャツのような印象を受けますが、袖を通してみるの絶妙なフィット感があり、新鮮味のあるシルエットを体感することができます。現在ワイドシルエットが主流となっている中、あえてワードローブに1つ加えておくのもおすすめです。また、サイズ展開は1・2・3があり、サイズ3は他と違ってフィッティングの仕様を変えているため、サイズがゆったりと取られています。
まとめ
最後までお読みいただきありがとうございます。生地をはじめ縫製やパターンなど研究と追求を重ねたアイテムを展開するMAATEE&SONSをご紹介しました。他ブランドと一線を画すこの拘りようは、デザイナーの想いを本当に感じられますよね。アイテムももちろんですが公式SNSも是非チェックしていただき、MAATEE&SONSの沼にはまってみてください。
モードスケープではMAATEE&SONSの買取を強化しています。アイテムの価値を適正に反映し、最高額を見出す査定をいたします。MAATEE&SONSのアイテムを売りに出すか迷っている場合にも、是非モードスケープにご相談下さい。とりあえず値段だけ聞いて検討したいという場合は、LINE査定などで査定額を見積もることも可能です。お気軽にご相談ください。
MAATEE&SONSのお買い取り案内ページはこちら
モードスケープではMAATEE&SONSの買取を強化しています。コットンシルクシャツをはじめ「俺の~」「永遠」シリーズのボトムスなど定番アイテムは特に高価買取いたします。お買い取りをご検討の際は、お気軽にご相談ください。
MAATEE&SONSの買取について
この記事を書いた人
小川剛司 (MODESCAPE 編集部)
ライター・ファッションモデル。学生時代のアルバイトからファッションの世界へ。大手セレクトショップの販売員、ECスタッフを経て、長年携わったアパレルの経験と知識を活かしWEBライターに。数々のファッションマガジンサイトで執筆を行い、メンズ・レディース問わずおしゃれを発信しています。現在は韓国を拠点にモデル活動しており、更なるファッション知識を探求中! Instagram:@t_t_k_k_s_s