PRADAの「ポコノ」が一新!環境に配慮した「Re-Nylon」の誕生
2020年にラフ・シモンズが共同クリエイティブ・デザイナーに就任し、ミウッチャ・プラダとタッグを組んだことで再注目を集めている「PRADA」。そんなPRADAといえば「ポコノ」というナイロン素材を使用したアイテムが思い浮かびますよね。この「ポコノ」ですが現在では使用されておらず、「Re-Nylon」という新しいナイロン素材へ変更されています。なぜPRADAはブランドを代表する素材であるポコノをRe-Nylonへ変更したのでしょうか?これには近年世界中で課題となっている環境問題が背景にあります。
この記事ではポコノ・Re-Nylonが生まれた歴史や特徴、ポコノからRe-Nylonへ移り変わった背景を解説していきます。そして一新されたPRADAのナイロン素材「Re-Nylon」を使用したアイテムも紹介しますので、是非最後までご覧ください。
ナイロン素材の基礎知識
1935年にアメリカで開発された世界初の合成繊維。石油が原料のポリアミドと呼ばれる合成樹脂から作られる繊維で、開発当初は女性用ストッキングに使用されていました。世界で2番目に生産量の多い合成繊維として知られるナイロンには様々な特徴があります。
まずは耐久性が高いという点。摩擦や磨耗に強くコットンに比べると約10倍もの強度を誇ります。ナイロンは元に戻ろうとする力が強いため弾力性があり、それによって必然的に頑丈さや耐久性が高まります。この性質はシワになりにいく特性も持ち、パッカブルなウェアにナイロン素材が用いられるのもそのためです。
また、水を寄せ付けない吸水性の低さは撥水力という点で評価され、レインコートやアウトドア用具、またバッグ類のファブリックとしてナイロンはとても重宝されます。水を弾く分、風をあまり通さない構造になっているので外気からの冷気を防いだり、服との間の温かい空気を逃すことなく保ち続けてくれます。そのため、ある程度の防風・防寒性にも優れていると言えます。
そんなナイロンですが熱には弱く、乾燥機やアイロンを使ってしまうと簡単に溶けたり変形してしまうので注意が必要。また先ほど挙げた水分を弾くという特徴は吸湿性が低いとも言えるため、汗を吸ってくれず、真夏に着る素材としてはあまり向いていません。
PRADAを代表する「ポコノ」
ブランドの低迷期を支え、PRADAを象徴するシリーズとなったポコノ。そんな人気アイテムの歴史を掘り下げていきます。
ポコノとは?
ポコノ素材と呼ばれる、ナイロンの1つ。主にパラシュートや工業用のテントなどに用いられ、PRADAが「ポコノシリーズ」と題してポコノを使ったアイテムをリリースするまでは、誰もバッグや商業用のアパレル製品に使うことはありませんでした。
ナイロンは元々シルクを模した生地として作られた過程があり、そのためポコノにはシルクのような上質な艶感が見られます。PRADAのラグジュアリーなテイストのバッグと相性も良く、すんなりとバッグの素材としてフィットしました。
またポコノにはバッグになくてはならない、耐久性の高さも持ち合わせています。破れに強いことはもちろん、雨を弾く撥水性の良さから汚れが付きにくいというのも特徴の1つ。
日常的に使うものだからこそ汚れや摩耗に強い必要があり、機能的でなければなりません。それに加えてナイロンの中でもポコノは軽量であり、レザーやコットンのバッグと比較すると使い勝手の良さが顕著にあらわれます。
実はナイロンは染色性の高いことでも有名。色が染めやすく、鮮やかな色や濃淡のある配色など様々な色を表現することが可能です。PRADAでは幅広いカラーバリエーションのバッグがリリースされました。
ポコノのはじまり
PRADAの3代目を引き継いだ「ミウッチャ・プラダ」が新たな変革を思い付きます。それは「これまでになかった新しい物を発表する」ということ。彼女が1977年にPRADAのトップとして就任した頃、ブランドの経営は停滞し王室御用達だった威厳もすっかりと影を潜めていました。そのため今までにない斬新な要素が必要だったのです。
そこで新たな素材を探している中、彼女の祖父にあたるPRADA創業者「マリオ・プラダ」が輸入をしていたポコノ素材に目をつけ、これを用いてバッグを作ることを思い付きます。丈夫で肌触りも良く、多少の撥水性があるポコノはバッグには最適な素材で、彼女はすぐさま専用の設備を導入し、バッグの生産に取り掛かります。
そして1978年にリリース。こうしてポコノは後に様々な種類のバッグやカラーバリエーションで展開されていくのですが、初めは世間から受け入れられ辛かったと言います。当時ラグジュアリーブランドが発表するバッグはレザーが主流。PRADA内部からもナイロンバッグの発売に反発する声が上がっていました。
ですがPRADAを再起させる斬新な物を探し続けていた彼女はポコノに希望を託し、周囲の反対を押し切ります。そして発売から数年してから徐々に人気に火が付き、ポコノは爆発的なムーブメントを巻き起こしていくのです。
ブランドの革新
今までのラグジュアリーブランドでは見ることがなかったナイロンバッグが徐々に世間に浸透していき、その真新しさから人気が生まれました。後にトライアングルロゴが装飾されるポコノは、セレブやファッショニスタらが持ったことや映画・雑誌に登場したことで「ナイロンの黒いバッグ=PRADA」の代名詞にさえなっています。
ポコノ発表初期の頃、ブームの火付け役になったのがミラノにいたファッションモデルたちだとも言われています。彼女たちがポコノを持ち、PRADAのお膝元であるミラノの街を歩く姿が世間の女性たちの目に留まり、その姿を真似し始めたことから爆発的ブームの一端となった影響があります。
より詳しいPRADAの歴史や現在のデザイナーの解説は下記の記事で紹介しています。
ポコノ素材を用いたアイテムはバッグだけに留まらず、帽子やウェアなど多岐に展開されました。結果、1978年のポコノの発表によってPRADAは低迷期を潜り抜け、現在のラグジュアリーブランドとしての地位を確立したのです。
ブランドを支え続けたポコノですが、実は2023年に生産が終了。そこには地球環境に配慮した考えがあり、PRADAはポコノに変わる新たな素材を発表しています。
エコ素材「Re-Nylon」
再生素材のナイロンを用いたRe-Nylonコレクションの発表はファッション業界に大きな影響を与えました。環境問題に配慮したPRADAの動向を解説していきます。
Re-Nylonとは?
PRADAが2019年6月、新たに発表した「Re-Nylonコレクション」。一見するとブランドのアイコンであるナイロンを用いたコレクションですが、従来のポコノ素材ではなく「エコニール(再生素材のナイロン)」を使用しています。
エコニールとはイタリアのリサイクル分野での先進企業である「AQUA FIL」が開発した環境に配慮したナイロン素材です。世界中の海から回収された魚網やプラスチック、繊維系廃棄物をリサイクルし、最終的に糸に加工。その糸を使って、再生ナイロン素材を作成します。
Re-Nylonのアイテムではポコノと比較すると同水準もしくはそれ以上の品質が期待でき、従来のナイロンより高密度な構造のため、より高い撥水性があります。また汚れや埃が付着しづらく、自宅での手入れも簡単。
PRADAでは2021年末までに「すべてのナイロンを再生ナイロン素材へ移行する」と掲げており、サステナブルな取り組みに意欲的な姿勢を見せています。またRe-Nylonコレクションではリサイクルを彷彿とさせるロゴに一新されています。
ポコノからRe-Nylonへの移行
大規模な取り組みをしてまでRe-Nylonへ移行したきっかけはやはり「環境問題」が挙げられます。アパレル業界の過剰生産による製品破棄や合成繊維による海洋汚染など様々な問題が起こっており、環境への負荷が多いと今までに議論が多くありました。
サステナブルに対して熱心に取り組むPRADAとしては、この問題を抜きにしてブランドを運営することは理念に反することになります。というのもポコノ自体が「バージンナイロン」と呼ばれる、これまで世界中で使われている従来のナイロン。それは石油などを原料とする合成繊維なのです。
合成繊維と環境問題にどのような関係があるかというと、それは「エネルギーの大量消費」にあります。まず合成繊維を作成するための石油の採取や精製過程で、コットン製品に比べると約3倍もの二酸化炭素を排出しています。それに加えて、製品化のため工場で機械を稼働させる電気エネルギー分ももちろん消費されるので、とにかくエネルギー消費が多いのです。
またそれだけでなく、合成繊維は化学物質に依存して作られるため「マイクロファイバー」による海洋汚染にも影響を及ぼします。非常に細かな繊維であるマイクロファイバーは自然に分解されることなく環境の中に残留してしまうので、海洋生物の生態系に害を及ぼす可能性も危惧されています。
環境への影響度
ではエコニールを使用することで環境にどのようなメリットがあるのか。まず先ほど述べたエネルギーの消費量が大幅に削減されます。一般的なナイロンと比べると約60%ほどエネルギーが抑えることが可能です。二酸化炭素の排出量に至っては90%の削減ができ、大気汚染問題に大きく貢献しています。
またエコニール自体が半永久的にリサイクルが可能な再生ナイロン素材で、石油を原料としておらず天然資源の過剰消費の軽減にも期待できます。
PRADAのエコニールを使用したRe-Nylonコレクションの発表は画期的な取り組みであり、ブランドのアイコンであったナイロン製アイテムはブランドイメージを損なうことなく、時代に合わせたアップデートに成功しています。
またPRADAだけではなく「GUCCI」や「BURBERRY」などのラグジュアリーブランドやファストファッションの筆頭である「H&M」もエコニールを採用している動きを見せており、様々なブランドがサステナブルな取り組みを行っています。
Re-Nylonシリーズをご紹介
PRADAのテーマや世界観はそのままに、Re-Nylonを使ってブラッシュアップされたアイテムたちをご紹介します。
ロゴプリント ダウンジャケット
シンプルで使い勝手の良い、PRADAのロゴがプリントされたダウンジャケット。Re-Nylonにアップデートされたこのアイテムはブランドのアイコンでもあるトライアングルモチーフをキルティング仕様にあしらい、ドロップショルダーでルーズなシルエットが特徴です。グースダウンを採用しているため、軽量かつ高い保温力が期待できます。
ロゴプレートナイロンコーチジャケット
Re-Nylonのファブリックが、カジュアルながらも随所に高級感を漂わせるコーチジャケット。さらりと羽織れる薄手の作りなので春先や秋口はもちろん、冬にはインナーとしても活躍。1年を通して使えるアイテムです。セレブやファッショニスタらが着用し、PRADAの中でも注目が高く人気があります。
ロゴプレート ショートスリーブナイロンシャツ
ボウリングシャツからインスパイアされたシャツで、ボウリングカラーを採用。開襟タイプの首元はリラックスな印象を与えてくれます。チェスト部分にあるフラップポケットはユーティリティなギミックとして搭載。そのためRe-Nylonの生地感も相まって、モードにもミリタリーにも見えるユニークなアイテムが実現しています。
トライアングルロゴポケットTシャツ
Re-Nylonのポケットが胸元に施された着心地の良いジャージーTシャツ。1枚で着ても十分な貫禄がある、シンプルで洗練された印象はPRADAならでは。トレンド感のあるボックスシルエットは使い勝手が良く、ワードローブ入り間違いなしのマストバイアイテムです。
ナイロンサフィアーノレザーバックパック
PRADAを象徴するフラップタイプのバックパックをRe-Nylonとしてアップデート。ハンドル部分は、こちらもPRADAのアイコンである「サフィアーノレザー」を採用。細やかに型押し加工された独特な筋模様が特徴的です。一見するとコンパクトなフォルムですが十分な収納力があり、デイパックや旅行用バッグとして重宝します。またフロントにあるメタルバックルが小気味いいアクセントに。
ナイロン ハット
つば広めでRe-Nylonを用いたハット。ブランドアイコンのトライアングルロゴが、チンストラップにあしらわれているユニークなディテールもポイントです。内側はコットンでライニングされているため、汗をかいても即座に吸収。不快感をなくし、いつでも被り心地の良い状態を保ちます。PRADAではバケットハットも同様に人気があり、ハットタイプの帽子は注目を集めています。
ロゴプレート ベースボールキャップ
サイド部分にPRADAのロゴプレートが装飾されたキャップ。従来カジュアルな印象を持つベースボールキャップですが、Re-Nylonがあらわすラグジュアリーな光沢は高級感を漂わせます。ストリートな着こなしや、シックなスタイリングにもフィットしてくれます。こちらも前述のハットと同じく、コットンライニング。
レザー スニーカー
スポーティなRe-Nylonにブラッシュドレザーを組み合わせたスニーカー。サイド部分のトライアングルロゴとタン部分のスクリーンプリントロゴをアクセントに、シックな表情を見せてくれます。ソールはボリュームのあるものをチョイス。トレンド感のあるスタイリングを実現します。スニーカーの軽快さ・カジュアルさを持ちながら、レザーの重厚かつクラシカルなテイストとの融合は、まさにハイブリッドと呼ぶに相応しいアイテムと言えます。
スマートフォン ネックストラップケース
取り外しすることが可能なストラップが付属したスマートフォンケース。小ぶりなデザインはミニショルダーバッグとして、スマートフォンだけでなく財布や鍵など、小物を収納することも可能です。トライアングルロゴのシンプルなアイテムなので、どんなスタイリングにもフィットしてくれます。
3ストライプナイロントラックジャケット(PRADA×adidasコラボ)
スポーツブランド「adidas」とラグジュアリーブランドであるPRADAとのRe-Nylonを使ったコラボアイテム。adidasのトラックジャケットをベースに高級感のあるテイストにブラッシュアップされています。ブランドを象徴する3本ラインはサフィアーノレザーで装飾。このコラボではトラックジャケットだけでなく、バッグやスニーカーなど、さらに数型が展開されています。
まとめ
最後までお読みいただきありがとうございます。ブランドを代表する素材を廃止し、新しい素材へ移行するにはかなりの挑戦であったと思います。しかし、Re-Nylonロゴを施したデザインなどポコノにも劣らないデザイン性が幅広い客層から支持を集め人気を博しています。そして、環境問題への取り組みからファッション以外の業界からも注目を集めることとなったPRADAの今後にもさらに期待していきたいです。
モードスケープではPRADAの買取を強化しています。今回ご紹介したRe-Nylonシリーズはもちろん、以前の ポコノシリーズは大変需要の高いアイテムとなっています。アイテムひとつひとつの価値を適正に反映し、最高額を見出す査定をいたします。PRADAのアイテムを売りに出すか迷っている場合にも、是非モードスケープにご相談下さい。とりあえず値段だけ聞いて検討したいという場合は、LINE査定などで査定額を見積もることも可能です。お気軽にご相談ください。
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モードスケープではPRADAの買取を強化しています。PRADAらしい上品なウェアから定番のポコノやサフィアーノレザーバッグまで、幅広く高価買取いたします。お買い取りをご検討の際は、お気軽にご相談ください。
PRADAの買取について
この記事を書いた人
小川剛司 (MODESCAPE 編集部)
ライター・ファッションモデル。学生時代のアルバイトからファッションの世界へ。大手セレクトショップの販売員、ECスタッフを経て、長年携わったアパレルの経験と知識を活かしWEBライターに。数々のファッションマガジンサイトで執筆を行い、メンズ・レディース問わずおしゃれを発信しています。現在は韓国を拠点にモデル活動しており、更なるファッション知識を探求中! Instagram:@t_t_k_k_s_s