高橋盾の思い描くファッション UNDERCOVERの世界観とは
かつて日本の裏原カルチャーを牽引し、今や世界中でカルト的人気を誇るブランドUNDERCOVER。 デザイナーである高橋盾のストリートとモードを融合したその独自の世界観は元ルイ・ヴィトンのアーティステックディレクターであるヴァージル・アブローにも影響を与えたと言われています。高橋氏のデザインセンスは様々なカルチャーに触れてきたバックボーンから裏付けられていました。
この記事では高橋盾の経歴・人物像と共に、UNDERCOVERの世界観を紐解いていきます。
高橋盾
出典 asahi.com
現在30代後半から40代にかけてのデザイナーやアーティスティックディレクターが率いるメゾンブランドの中で、高橋盾の名前が頻繁に影響力のある人物として言及されることがあります。高橋氏の独創的なデザイン哲学や彼が業界にもたらしたイノベーションは、次世代のファッションデザイナーやアーティスティックディレクターに大きな影響を与えていることがうかがえます。
ここでは、彼がどのような経歴を歩んできたのか、「デザインのソース」や「関わりの深い人物」などから紐解いていきます。
初期の経歴
UNDERCOVERのデザイナー高橋盾は日本のファッション界における独創的なデザイナーの一人として世界から高く評価されています。彼は1969年に、日本有数の織物の街である群馬県桐生市に生まれました。
幼少期から、高橋氏はアートへの強い関心を示していました。特に、小学生の頃には、デッサン教室やかかし絵教室へと足を運び、6年間にわたり芸術的技術と感性を磨き上げました。
高校を卒業した後、彼は更なる知識と技術の習得を求めて、文化服装学院へと進学します。ここで彼は、将来的に重要なパートナーとなるNIGOをはじめ、多くの同志たちと出会いました。
高橋氏といえば、彼の愛称である「ジョニオ」が象徴的です。この愛称は、元セックスピストルズのジョニー・ロットン(ジョン・ライドン)に風貌が似ていることに由来しています。彼の外見だけでなく、反骨精神と独自のスタイルを持つことで知られるジョニー・ロットンと同様に、高橋氏もまた、ファッション業界において革新的なアプローチと斬新なデザインで知られるようになりました。
デザイナーとしての経歴
学院在学中の1990年、高橋氏は一之瀬弘法と手を組み、彼らの創造力とビジョンを形にするためのブランド「UNDERCOVER」を設立しました。この時点で、彼らはまだ小規模ながらも、デザイナーとしての活動を本格的にスタートさせることに成功します。
1991年、文化服装学院を卒業した後、高橋氏は再び大きな一歩を踏み出します。彼とNIGOは共同で「NOWHERE」という衣料品店をオープンしました。この店は、彼らのデザインする衣服やアクセサリーを展示する場であり、同時に新進デザイナーたちのクリエイティブな作品を紹介するプラットフォームともなりました。
2000年に入ると、高橋氏のキャリアはさらなる加速を見せます。東京コレクションにおいて、彼のブランド「UNDERCOVER」はますますの注目を集めるようになりました。そして2001年秋、彼は「第19回毎日ファッション大賞」のグランプリを受賞するという輝かしい成果を達成します。
この賞は、川久保玲・山本耀司・三宅一生・高田賢三といった、日本を代表するデザイナーたちも受賞している権威あるものです。高橋氏にとって、この受賞は彼のデザインが業界内外から高く評価されていることの証明であり、彼のキャリアにおける重要な転機となりました。
2002年秋、2003春夏シーズンには、パリコレクションにデビューし、その才能を世界の舞台に披露しました。
高橋盾のデザインソース
高橋盾のデザイン哲学は、パンクロックの反骨精神と独特な美学から大きな影響を受けています。彼はパンクロックに傾倒しており、セックスピストルズへのリスペクトを表現するために「東京セックス・ピストルズ」というバンドでボーカルを務めていました。
また、高橋氏は高校生の頃、彼は自分の制服のパンツを細くするなどして、独自のスタイルを追求し始めました。また、ヴィヴィアン・ウェストウッドやヒステリックグラマーなど、パンクにルーツを持つブランドの服装を好んで身につけていました。
そして、高橋氏のデザインキャリアにおける重要な転機の一つが、1980年代後半のCOMME des GARÇONSのショーです。このショーで提示されたパンクをテーマにしたコレクションは、彼にとって目から鱗が落ちる体験でした。「そのコレクションは、パンクがテーマで、とにかく服のつくりや細かな仕様が、学校ではとても教えてくれないようなものだった」と彼は後に回想します。この経験は、高橋氏が自身のルーツであるパンクをデザインに積極的に取り入れるきっかけとなりました。
このように、高橋盾のデザインは、パンクロックの精神とその視覚的な表現から深いインスピレーションを受けています。彼のデザインにおけるパンクの影響は、単なるスタイルの模倣にとどまらず、彼の創作の根源に深く根付いているのです。
関わり深い人物
【NIGO®】
出典 the-comm.online
NIGO®氏は、日本のファッション界において特別な地位を占める人物です。彼は元々「A BATHING APE(ア ベイシング エイプ)」のディレクターとして知られ、現在では「HUMAN MADE」のデザイナーとして活躍しています。高橋盾とNIGO®氏は、時折雑誌の対談などで共に登場し、関係性や相互の影響について語ることがあります。
この二人の出会いは、フォークソング部でのことでした。高橋盾がNIGO®氏よりも一つ年上であることから、彼らの関係は先輩と後輩という形をとっています。しかし、彼らの関係性は単なる先輩後輩の枠を超え、友情へと発展しました。特に、ヴィヴィアン・ウェストウッドのファッションを共に愛好するという共通の趣味が、彼らの間の強い絆を形成する大きな要因となりました。
その後、彼らは原宿に「NOWHERE」という店を共同でオープンすることになります。この店は単なる衣料品店にとどまらず、裏原宿カルチャーの発信基地として機能しました。彼らが創出した空間は、若者たちに新しいスタイルと表現の場を提供し、裏原宿ブームの火付け役となりました。
【藤原ヒロシ】
藤原ヒロシは裏原ムーブメントの火付け役とも言われ、90年代のユースカルチャーを形成する基盤を築き上げました。彼のデザインする「GOODENOUGH」は、ファッションとカルチャーの融合を象徴するブランドとして、多大な影響を与えてきました。
高橋盾と藤原ヒロシの関係は、単に互いにリスペクトし合うクリエイターというだけではなく、共同で「AFFA(Anarchy Forever Forever Anarchy)」というブランドを立ち上げました。このブランド名は「無政府主義よ永遠に!」という意味を持ち、彼らの創作活動における反骨精神と自由を求める姿勢を象徴しています。さらに、2011年からは「ASSEMBLE」という名前で新たなプロジェクトを展開しています。これらの活動を通じて、高橋盾と藤原ヒロシは、ファッションを超えた文化的な価値を生み出すことに成功しています。
【川久保 玲】
高橋盾は川久保玲がデザイナーを務めるCOMME des GARCONSのショーを訪れた時、パンクをテーマにしたコレクションに強い衝撃を受けました。それは、彼のクリエイティブな方向性を確信させるものであり、「自分の方向性は間違っていない」という勇気を彼に与えたのです。
その後、高橋盾は川久保玲がUNDERCOVERのスニーカーを求めているという話を聞き、高橋は慌ててスニーカーを送り、これが二人の間の手紙のやりとりを始める契機となりました。
また、UNDERCOVERがパリコレでデビューする際には、川久保玲もこれを祝う前夜祭に参加しました。2006年にUNDERCOVERが伊勢丹に出店した時には、コム・デ・ギャルソンの店舗に「WELCOME U」というメッセージが飾られるなど、両者の間には支援と称賛の気持ちが明らかにされています。
【一之瀬弘法】
一之瀬弘法と高橋盾は、共にクリエイティブな道を歩む中で深い絆を築いてきました。文化服装学院でのクラスメイトとして出会った二人は、あるTシャツ制作の授業がきっかけで仲良くなりました。一之瀬氏が作成していたTシャツに高橋氏が興味を持ち、声をかけたことから、二人の親交が始まったのです。
1990年、二人は力を合わせて「UNDERCOVER」を立ち上げることになります。彼らは当初、クラスメイトに向けてヴィヴィアンのパクリTシャツを販売したり、風呂場を使ってTシャツを染めたりするなど、独自の創造活動に励んでいました。
しかし、その後一之瀬氏はUNDERCOVERから離れ、自身のブランド「ヴァンダライズ」を立ち上げる道を選びます。二人はクリエイティブな道のりにおいて新たな章を開くこととなりました。
【大川ひとみ】
高橋盾と大川ひとみの出会いは、彼が「NOWHERE」というショップをオープンした頃に遡ります。このショップは後に「裏原ブーム」を牽引する重要な存在になりますが、その初期段階で大川ひとみは高橋盾を非常に可愛がっていたと言われています。
二人は朝までクラブで遊んだり、ファッションについて熱く語り合ったりするなど、親密な交流を持っていました。また、この関係を通じて高橋盾と藤原ヒロシの交流も始まり、後に彼らは「AFFA」や「SOMETHING ELSE」などのプロジェクトを共同で制作するまでに至ります。 特に興味深いのは、大川ひとみが高橋盾にシャネルのジャケットのリメイクを依頼したエピソードです。彼女は高橋盾の才能を信じ、「ジョニオ君なら素敵にしてくれる」と確信していました。そうして、自身には似合わないと感じたシャネルのジャケットを、「分解したり、切ったりしてもいいから」という条件でリメイクを依頼しました。
この逸話は、大川ひとみが高橋盾のクリエイティビティとその才能をいかに高く評価していたかを示すものであり、二人の間にはファッションを超えた深い信頼関係が築かれていたことを物語っています。
ユニクロとの協業
出典 gu-global.com
高橋盾が2012年にユニクロとのコラボレーションを発表したことは、ファッション界における大きな話題となりました。さらに、2021年と2024年には、ユニクロのセカンドラインであるGUともコラボレーションを行い、多くの世代から高い人気を集めました。高橋盾の創造的なデザインが、ユニクロやGUの広範な顧客基盤に新しい風を吹き込みました。
高橋盾とユニクロとの協業は、高品質かつ手頃な価格のファッションを追求するユニクロの理念と、高橋盾の先鋭的なデザインが融合することで、新たな価値を生み出し、ファッション業界において両者の強みを最大限に活かす成功例として位置づけられています。
UNDERCOVER
「WE MAKE NOISE NOT CLOTHES」というパンク精神に溢れるスローガンを掲げ、UNDERCOVERは独自の世界観を展開し続けるブランドとして知られています。そして、設立から30年を超える現在も、日本を代表するブランドの一つとして、変わらぬ人気を誇っています。その魅力は、時代やトレンドに左右されず、常に新鮮なデザインとメッセージでファッション業界に挑戦し続ける姿勢にあります。
ここからは、UNDERCOVERというブランドについて深く見ていきましょう。
UNDERCOVERのブランド概要
UNDERCOVERは、1990年に設立された日本のファッションブランドで、その名は「秘密めいたもの」を意味する造語から取られています。このブランドは、「見たことのあるようで誰も見たことのない、ノイズを感じる服を作りたい」というユニークなコンセプトを掲げています。
UNDERCOVERの作品には、独特の美学と創造性が反映されており、そのデザインは世界中のファッション愛好家から高く評価されています。
UNDERCOVERのブランドライン
ファッションブランドUNDERCOVERは、複数のブランドラインを展開しており、それぞれが異なるコンセプトとターゲットを持っています。
ライン名 | 概要 |
---|---|
Undercoverism | 2003年からメンズラインとしてスタートし、2015年に一度統合された後、2021AWに再びメンズラインとして復活しました。このラインは「UNDERCOVERの「ism」に共感する世代」に向けて展開されています。 |
John UNDERCOVER (メンズ) & Sue UNDERCOVER (ウィメンズ) | 2013年の秋冬コレクションからスタートしたセカンドラインです。「John」と「Sue」はそれぞれ、UNDERCOVERの基本となる男性像と女性像を象徴しており、幅広いターゲット層に向けたデザインが特徴です。 |
GYAKUSOU | 2010年にスタートしたNIKEとのコラボレーションラインで、スポーツウェアの領域で高橋盾のデザイン哲学を反映しています。 |
UNDERCOVER the Shepherd | 「今、自分が着たい服」をコンセプトにしたラインで、UNDERCOVERのコアラインとは対照的に、よりシンプルでベーシックなデザインが特徴です。 |
UNDERCOVERの名作アイテム
【2003SS 瘡蓋パッチワーククラストパンツ】
「瘡蓋パッチワーククラストパンツ」は、無数の布の切れ端をパッチワークすることで制作され、その名の通り、かさぶたが形成される過程の自然な治癒と新生を象徴するデザインとなっています。
2003年春夏コレクションで発表されました。このコレクションは「瘡蓋」を意味する「SCAB」をテーマに掲げており、ブランドにとって初めてパリコレクションに参加したシーズンです。
瘡蓋パッチワーククラストパンツはブランドの独創性と、傷ついたものから新たな美を生み出す力を見事に表現しており、ブランドのアイコニックな作品の一つとして多くのファッション愛好家に愛され続けています。
【2004AW BUT BEAUTIFUL ボンバージャケット ぬいぐるみ勲章バッチ】
UNDERCOVERの2004年秋冬コレクション「BUT BEAUTIFUL」に登場したボンバージャケットは、アシンメトリーなデザインと優しい色合いの柔らかな生地使用が特徴的なアイテムです。
このジャケットは、肩から自然に落ちる形状であり、着用者に洗練されたこなれ感を演出します。特に注目すべきは、ジャケットに添えられたぬいぐるみで作られた勲章バッジです。このバッジは、ミリタリー要素を感じさせるボンバージャケットに対し、ぬいぐるみの柔らかさと遊び心を加えることで、独特のコントラストを生み出しました。このユニークな組み合わせにより、伝統的なミリタリーウェアに新たな解釈を加えることに成功し、互いの特徴を引き立て合う名作として知られるようになりました。
【2004SS Languid MA-1 変形スウェットボンバージャケット】
UNDERCOVERの2004年春夏コレクションから登場した「Languid MA-1 変形スウェットボンバージャケット」は、伝統的なMA-1ボンバージャケットを独自の解釈で再構築した名作です。
このアイテムは、スウェット素材を用いることでカジュアルながらもユニークな雰囲気を醸し出し、従来のミリタリーウェアに新たな命を吹き込みました。特に注目すべきはその変形デザインで、アシンメトリーなカットや縫製により、動きのあるシルエットと流れるようなラインを生み出しています。このジャケットは、着用することで立体的な形状が際立ち、UNDERCOVERらしいアバンギャルドなスタイルを体現しています。
【2005AW Arts&Crafts 85デニム】
UNDERCOVERの2005年秋冬コレクション「ARTS&CRAFTS」からリリースされた「85デニム」は、その販売価格85,000円から名付けられた、ブランドを代表する名作アイテムです。このデニムは、限定生産により市場に出回る数が少なく、特にメンズサイズはさらに希少性が高いことから、ファッション愛好家の間で高い人気を誇っています。そのデザインと希少性は、カニエ・ウェストが着用したことでさらに注目を集め、海外でもUNDERCOVERのデニムへの関心が高まりました。
この「85デニム」は、UNDERCOVERのクラフトマンシップとアーティスティックなデザインが融合したアイテムとして、ファッション業界内外で高く評価されており、ブランドのアイデンティティを象徴する作品の一つです。
【08ライダース】
UNDERCOVERの2008年秋冬コレクション「UNREALREALCLOTHES」で登場した「08ライダース」は、2008年の初期モデル発売以降、ブランドの定番アイテムとして知られています。このジャケットのベースとなっているのは、Lewis Leathersのライトニングモデルです。しかし、裾のベルトのようなデザインや、サイクロンを思わせる独特のステッチラインなど、UNDERCOVERオリジナルの要素が多数組み込まれています。
特に、レザーパッチがあるべき箇所には、ルイスレザーのオーバルパッチを剥がしたかのような縫い跡と、UNDERCOVERらしいメッセージ「WE MAKE NOISE NOT CLOTHES」がプリントされており、ブランドの反骨精神と遊び心を感じさせるデザインになっています。
まとめ
最後までお読みいただきありがとうございました。
ファッションとカルチャーを結びつけた第一人者でもある高橋盾。氏の唯一無二の世界観は今後も多くの人を魅了していくことでしょう。
また、UNDERCOVERの2000年代初期~中期のアーカイブは愛好者が多く、リセールバリューも高いのが特徴です。
モードスケープでは、UNDERCOVERのアイテムの買取を強化しています。アイテムの価値を適正に反映し、最高額を見出す査定をいたします。UNDERCOVERのアイテムを売りに出すか迷っている場合にも、是非モードスケープにご相談下さい。とりあえず値段だけ聞いて検討したいという場合は、LINE査定などで査定額を見積もることも可能です。お気軽にご相談ください。
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UNDERCOVERの買取について
この記事を書いた人
MODESCAPE
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